施政方針(令和5年第1回米原市定例会)

更新日:2023年03月14日

はじめに

長引くコロナ禍や、不安定な世界情勢、物価、年金、賃金、雇用など、暮らしと将来への不安は、先行きが見通せない生きづらさとして、市民の皆さんから伝わってきます。その声の中に、「米原に住み続けたいからこそ」、「米原が大好きだからこそ」、「人口が減り、衰えていくまちの未来が心配」、「このままではまちが続かないのではないか」という切実なる叫びがあります。
この「人口減少は、静かなる有事」であり、私は、非常に強い危機感を持っています。「人口減少に立ち向かう」というテーマは、地方自治の根幹をなす問題であり、米原市は「水源の里まいばら元気みらい条例」を制定するなど、なしうる限りの施策を先駆けて推進してまいりました。
いよいよ正念場を迎えています。市民の不安を払しょくし、私たち市役所は市民に最も身近な行政として、市民の声に「共感」し、互いに「共鳴」することで、持続可能なまちとなるよう、前進を図ってまいりたいと考えています。

令和5年度最重点施策

1.人口減少対策:子ども・若者支援

人口減少対策の第1の柱は「子ども・若者支援」です。
将来のまちの主役は、今を生きる子ども・若者たちです。まちの未来は彼らの中にあると言っても過言ではありません。子ども・若者支援を今一度、大胆に進め、市として応援のメッセージを伝えていく必要があります。本市の現状を見ると、つい5年前、市内で1年間に生まれた子どもの数は300人を超えていました。しかし、令和2年度は230人余りにまで減少し、35人の学級が2つ無くなったことになります。若い世代が出産をためらう要因は、「子育てや教育にお金がかかる」経済的不安です。これは政治の責任です。米原市では、出会いから、結婚、妊娠、出産、子育てまで切れ目のない支援に取り組むと同時に、地域社会全体で子育てを応援することを理念に、親や保護者に寄り添った子育て環境づくりに取り組んでまいりました。しかし、残念ながら、貧困や格差は世代を超えて連鎖する傾向にあり、本来、等しく与えられなければならない子どもたち一人ひとりの権利を、親や保護者の義務と責任に頼っていては、もはや保証されないという社会の現実があります。何ともしようがない、生きづらさは、子どもの未来の可能性をも奪ってしまっています。米原市は、子どもたち本人に向き合って、子育ちを支援し、子どもを産み育てるという望みを、いつでも、だれもが安心して持ち、叶えることのできる環境へと転換してまいります。
まずは、これまで実施していた中学生までの医療費無料化を拡大し「18歳まで医療費の無料化」を、この10月から実施します。次に、子育て支援策の「所得制限を撤廃」します。子どもを応援する目的であるはずの支援が、これまで親の所得により制限されてきました。子どもたち一人ひとりに与えられるべき権利は、親や保護者の所得や経済事情に左右されてはなりません。子どもたちに充実した学校生活を送っていただくための「中学校入学支援金」と、「部活動用具等購入補助金」は、この令和5年度から、「給付型奨学金」は令和5年度募集分から所得制限を撤廃してまいります。
また、現在、子どもの人数が増えれば、親の負担が増え、少子化対策に逆行することになっている、国民健康保険税の子どもに係る均等割の負担を18歳まで実質ゼロにする米原市独自の応援金について、一般財源化することで、子育て世帯への安定的な支援となるよう目指してまいります。
そして、保育所等においては、米原の子どもたちの保育に、公立・民間を問わず、情熱を持って向き合っていただいていますが、残念ながら公立と民間の間には保育士処遇に格差が存在します。雇用環境の改善と人材確保を図るため、保育士給与の格差是正に向けて、民間保育施設の処遇改善の支援を行います。保育士の配置基準については、3歳児の子ども20人につき保育士1人以上を配置するとしている国の基準に対し、米原市ではこれまでから、子ども15人につき保育士1人の配置へ拡充しています。さらに、子どもや保護者の安心と保育士等の負担軽減を図るため、独自に低年齢児の保育士配置の拡大を検討してまいりたいと思います。
これまで衛生面での課題や、保護者と保育士の両方に負担となっていた、保育所での、使用済み紙おむつの保護者持ち帰りを廃止し、子育て環境の充実を進めます。また、市内の高校は、駅や路線バスなどの地域公共交通と共に、まちにとって重要な社会資源です。高校と地域公共交通の維持・存続は、公共インフラの地域課題です。そこで、鉄道を利用し、近江長岡駅から伊吹高校へ通学する生徒に、バスとデマンドタクシー「まいちゃん号」を共通利用できる無料の定期券を交付し、駅と高校を結ぶ公共交通の強化による、地域の学校支援を行います。

2. 人口減少対策:まちの価値を創造

人口減少に向き合うことは、子ども・若者支援と同時に、まちの魅力と価値を創造し、市民の米原への愛着を育て、市外から人を呼び込むことにつながります。そこで、第2の柱として、「まちの価値を創造」することにより未来を切り拓いてまいります。

新たな価値の創造:環境

地球規模で環境問題が深刻化し、人口減少が進む中で、まちの環境を誇りに思い、活かし、未来へつないでいくためには、人と環境の関わり方を見つめ直す必要があります。持続可能な社会の実現に向けて、市民の皆さんと協力しながら、米原から行動を起こす取組として、この3月には「米原市気候非常事態宣言」を行い、気候変動への適応や、温室効果ガスの削減に向けて、一歩先を進んだ「脱炭素の地域づくり」という価値の創造を更に進めてまいります。国から「脱炭素先行地域」に選定されたことにより、ヤンマーホールディングス株式会社様と滋賀県と共同で、「農山村の脱炭素化と地域活性」をテーマにした脱炭素地域づくりを、本格的に進めてまいります。市役所本庁舎駐車場等の市有地や、ヤンマー中央研究所に太陽光発電設備を設置するほか、柏原地先において、令和6年度から8年度にかけて、営農型太陽光発電設備の設置を進めます。この営農型太陽光発電「ソーラーシェアリング」は、再生可能エネルギーである太陽光の活用と、中山間地域の課題である耕作放棄地等の解消を同時に図れるものと期待しています。家庭で利用するエネルギーを「減らす、創る、賢く使う」を総合的に進めることが大事です。スマートエコハウスの普及のため、住宅への太陽光発電や蓄電池などの設置を支援するほか、家庭で発電された電気を更に有効活用するため、電気自動車等の導入を支援します。また、環境を守り、次世代へ引き継ぐためには、温室効果ガスの削減とあわせて、プラスチックごみの削減も地球規模での生態系や環境を守っていくために必要です。そのために市役所本庁舎に設置している無料の給水スポットをほかの公共施設にも設置し、マイボトルの普及を呼びかけ、市民のプラスチック製品削減に対する意識の醸成を図ってまいります。

新たな価値の創造:デジタル

次に、デジタル社会を加速させることによる、まちの価値を創造してまいります。社会のデジタル化やDXの推進により、デジタル技術を活用して、生産性の向上だけではなく、人、モノ、地域が、いつでも、どこでも、つながることができる暮らしが更に身近になりました。このデジタル化は新しい価値を生み出し、市民の「時間と距離からの解放」を大きく進める効果があります。デジタル化への重要なツールであるマイナンバーカードの普及は、全国的にも運転免許証保有者を超えたとのことであり、本市のマイナンバーカードの申請率は、1月末現在で県内1位の79.49パーセントにまで普及が進み、全国の自治体の中で63位の申請率となりました。今後ますますデジタル社会が進展していくことになります。そこで、マイナンバーカードの活用に向け、まずは市役所窓口業務において拡充を図り、市民にとってより便利な窓口サービスを提供してまいります。市役所窓口に、マイナンバーカード専用端末を新たに設置し、来庁者の方が、自分で、手軽に、住民票などを発行することが可能となります。あわせて、住民票などのコンビニ交付は一部のコンビニ店舗に限られていましたが、今後はスーパーや量販店などの店舗端末を含め全国5万以上の店舗で使えるようになるほか、住民票記載事項証明書の発行機能を更に追加します。さらに、市内のスポーツ施設や、学びあいステーション、ルッチプラザなどの公共施設の利用予約を、オンラインでできるシステムを導入し、施設に行かなくても公共施設の空き状況の確認や、利用予約ができるようになります。
担い手不足や生産性向上が課題となっている農業分野でのデジタル化を進め、農業と先端技術を組み合わせたスマート農業を推進し、新たな担い手確保と育成で、持続可能な地域農業を推進するための支援制度を創設します。スマートフォンやインターネットなどの普及による暮らしのデジタル化で、デジタル技術を使いこなせる人とできない人との情報格差「デジタル・デバイド問題」が生じています。誰一人取り残さないためにも、引き続き、高齢者等のスマホ初心者の方を対象に、無料のスマートフォン体験 講習会を丁寧に実施してまいります。

今ある価値を活かす:伊吹山

一方、新たな価値の創造だけではなく、既にある価値を守り活用し、まだ知られていない価値を磨いていくということも大切です。本市の魅力は、伊吹山や琵琶湖をはじめとする豊かな自然です。びわ湖の素だから「ヒトが生きるにはココチよい」。伊吹山や霊仙山などに降り注いだ一滴の水が、美しい自然や文化、貴重な動植物の命を育み、母なる琵琶湖へと注がれます。ここに生まれ、育ち、暮らしの全てが豊かな自然と共にある「地域のココチ良さ」を、私たちはブランドとして発信していまいりたいと思います。雄大で美しい伊吹山は、米原にとって大切なシンボルであり、貴重な植物の宝庫として、多くの人を魅了し、愛され続けています。しかし、この「伊吹山」の荒廃が、年々進んでいます。山頂付近の植生が減り、白い岩肌が遠くから肉眼で見えるほど広がっています。増え続けるシカの食害で、伊吹山特有の貴重な植物の多様性が失われ、登山道などの斜面の崩壊が進み、非常に危険な状態です。この状況を打破するため、これまでにない新しい手法にチャレンジし、市民の皆さんとともに伊吹山再生モデルと呼べる、成功事例の構築を目指してまいります。具体的には、山頂の植生保護を担う「伊吹山レンジャー」を創設し、専用人材として2人の隊員を配置します。また、「ドロップネット」と呼ばれる新たな仕掛けを導入し、シカの捕獲強化に挑戦するほか、山頂の植生保護柵の設置とあわせ、荒れている南斜面での緑化試験を進めます。こうした市独自の取組を国や県、関係団体にもしっかりと伝えながら、更なる連携を呼びかけ、総がかりで伊吹山の環境再生を力強く前進させてまいります。

今ある価値を活かす:米原駅

次に、新幹線停車駅である米原駅の存在は、米原の豊かな自然と、都市部への高いアクセス性の、2つの魅力をつなぐ、本市が持ち合わせる大きな価値であり、徹底的に活用しなければなりません。昨年、観光需要の高まりから、米原駅東口と近江地域を巡回し、民間の観光施設を結ぶ路線バスが、新たに運行を開始しました。こうした、民間との連携による新しい地域活性化の動きが米原駅を起点に生まれています。今後は、2025関西万博をはじめインバウンド需要の増加を視野に、市独自の工夫とアイデアで米原駅の価値を活かした観光と移住定住を更に進めてまいります。市内での体験型観光プログラムを提供する事業者や、市内の観光地を巡る旅行商品を提供する事業者の支援のほか、市の観光振興を担う一般社団法人びわ湖の素DMOと連携して、米原駅を活用した交流人口・関係人口の増加を図ります。また、新幹線と一緒にホテルや観光プランなど旅行全体の予約と決済ができるEX-MaaSと言われるシステムの稼働に合わせ、JR東海ツアーズ様とともに、長浜、彦根、高島などの近隣市と連携した周遊観光を展開し、更には岐阜県や福井県の近隣市町とも連携した広域観光を進めます。
コロナ禍を契機に、リモートワークが普及する中、市役所本庁舎3階のコワーキングスペースTETTE MAIBARAは、多くのビジネス利用で連日、賑わっています。都市部への高いアクセス性と、豊かな地域資源を併せ持つ本市の特徴を活かして、リモートワークだけでなく、市内観光や将来的な移住定住につながるよう、体験ツアーや移住相談窓口の充実などを進め、米原駅の価値を活かして、都市部などからの、人の流れの拡大に取り組みます。また、新幹線停車駅の強みを活かし、都市部に勤務する若者世帯の移住や、U・Iターンを促進する、「新幹線通勤者定期券等補助制度」は、令和5年度から補助条件を見直し、新幹線通勤利用者の米原市移住につなげてまいります。

今ある価値を活かす:文化財

さらに、市内に眠る魅力を磨くことで新たなまちの価値として発信していくことにも取り組みます。国の登録有形文化財に登録された旧常喜医院の耐震改修工事を進め、貴重な資料や庭園などを広く公開し活用してまいります。

総合計画の6つの基本目標に沿った主要事業

続きまして、第2次 米原市 総合計画に掲げる6つの基本目標に沿って、将来像の中にある「住みよさが実感できるまち」への取組を着実に推進するため、令和5年度の主要事業について御説明申し上げます。

1.健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり(福祉)

まず、1点目「健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり」についてです。
子どもを産み育てる環境を整え、いつまでも安心して、生き生きと健やかに暮らせる支え合いのまちづくりを進めます。市民の安心した暮らしを支えていただいているのは、開業医の先生方による地域医療です。しかし、医師の高齢化や後継者不足など、地域医療の維持・存続の危機が、市民の不安になっています。この、地域医療の維持と充実に向け、市内での開院や診療所等の継続を支援する制度を創設します。
市では、少子化対策として、出会いから結婚、出産、子育てまで切れ目のない支援の取組を進めています。結婚を希望する方に寄り添いながら、出会いと結婚をサポートするため、滋賀県が提供しているAIマッチングシステムへの登録を支援し、結婚新生活支援制度とあわせてパートナーとの出会いを応援してまいります。保育所等の入所受付から保護者の皆さんへ決定通知をお送りできるまでに、これまで2か月程度の長い期間をいただいておりました。電子申請での入所申込みとあわせて、新たにAIによる入所選考システムを活用することで、より早く、保護者の方へ入所の結果をお知らせし、安心いただけるようサービスの向上を図ってまいります。
近年の夏は、異常とも言える猛暑が記録されています。更に長引くコロナ禍の影響による外出自粛などにより、自宅で一人過ごしておられる高齢者世帯等の熱中症リスクが高まっています。これまでの高齢者エアコン設置補助制度を拡充し、地域の中で生活にお困りの高齢者に寄り添った支援を強化してまいります。

2.ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり(教育・人権)

次に、2点目「ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり」についてです。
学校、家庭、地域が連携しながら子どもを育み、互いに学び合い、人権を大切にし、多様な主体が共生できるまちづくりを進めます。コロナウイルスの感染が国内で確認されてから、3年が経過しました。いまだ感染は収まらず、長引くコロナ禍による生活の制限やストレスが、今、子どもの心身の不調和と心の成長に大きな影を落としています。これまでから、教育委員会では教育支援センター「みのり」を運営し、不登校児童生徒に対し、学校と連携した支援を進めています。しかしながら、学校に登校した後、さまざまな事情により、教室には、まだ入れない子どもたちは、別室で過ごしている現状です。こうした生きづらく、悩みを抱えた子どもたちに、これまで以上に寄り添う必要があります。そこで、まずは市内1か所の中学校の教室を使い、市独自で、子どもの自立を支援する専任の教員を配置する 「ステップ・フォワード・プログラム」を導入し、誰一人取り残さない、きめ細かな支援を進めます。
ロシアによるウクライナ軍事侵攻が長期化しています。子どもは「何で?」と大人に聞きます。子どもは、戦争が起こった理由を知りたいのではありません。「戦争を止めて欲しい」と訴えているのです。私たちがすべきことは、戦争の理由を説明するのではなく、戦争に反対し、戦争をやめさせようとしている大人がいる事実を示すことです。本市は、非核平和都市を宣言し、核兵器の廃絶と世界の恒久平和を訴えるまちとして、後世に戦争の悲惨さと平和の大切さ、命の尊さを伝えていく、大切な使命があります。現在、先の大戦の戦争犠牲者を刻銘した平和の礎の準備を進めており、令和5年度末の竣工を予定しています。竣工記念の式典等をとおして、非核平和への誓いを、子どもたちを含め、市民の皆さんとともに確かめ合い、発信してまいります。
ジェンダーに関して、世界の常識が、日本の常識にはなっていません。選択的夫婦別姓、同性婚、性的少数者など、多様性の尊重は、先進国に大きく遅れている日本の法制度の現状があります。指導者層の低位な人権意識を背景に、日本社会の生きづらさとして今なお現存しています。憲法13条は、「すべての国民は、個人として尊重される。」と明快に、幸福追求の権利を掲げています。米原市は、性の多様性を尊重する施策として、パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度を創設します。市は公にこの宣誓を証明し、お二人が互いを人生のパートナーとして、または、ファミリーとして自分らしく安心して暮らしていただけるように応援してまいります。
昭和56年、今から42年前に伊吹山の山頂で採火された炎がトーチに移され、ランナーの手によって「炬火」として市内を巡ったのが「びわ湖国体」でした。私は、あの感動と興奮を、今も覚えています。沿道に多くの市民がつめかけ、歓喜に沸いたあの瞬間が、2年後の令和7年、44年ぶりに、再び米原にやってきます。数々のオリンピアンを輩出するなど、ホッケーのまちである本市では、ホッケー選手の育成・強化支援や、スポーツボランティアなどの受入準備を進めるとともに、同時に開催される全国障害者スポーツ大会を通して、パラスポーツや障がいに対する理解も深めてまいります。

3.水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり(環境・防災)

次に、3点目「水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり」についてです。
豊かな自然を次世代に引き継ぎ、人と自然の共生と、地域防災の充実を図ることで安心・安全なまちづくりを進めます。市民や、子育て世帯が集い、遊び、語らい、安らぐことができる空間を創るため、国道8号バイパスに隣接する入江地先に、令和9年度のオープンを目指して、緑の基本計画に基づく都市公園「(仮称)磯公園」の整備を進めることとし、令和5年度は実施設計等に着手してまいります。
地震大国・日本にとって、トルコ・シリア地震などの大災害は、ひと事ではなく、平時からの備えが肝心です。激甚化・頻発化する自然災害や地震等が発生した際、迅速な応急・復旧活動を被災自治体だけで対応するには限界があることから、各地の自治体や各分野で高い能力を持っておられる民間企業等と、災害時応援協定などに基づく連携を進め、更なる地域防災力の強化を進めてまいります。また、災害時に大切なことは、市民への必要な情報の発信と、確実な伝達です。市の防災アプリや伊吹山テレビ、SNS等を連携させた緊急情報の発信を引き続き行うとともに、万一の際の避難場所となる自治会館等へのWi-Fi整備など情報インフラの強化を検討してまいります。
社会基盤である上下水道施設をしっかりと維持していくための長寿命化と強靱化も重要です。引き続き磯浄水場の改築と耐震対策や、広域避難所への水道管を優先して耐震化工事を進めてまいります。下水道につきましては、主要な管路の耐震化工事や広域避難所のトイレ不足を解消するマンホールトイレの設置を引き続き進めてまいります。

4.地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり(産業経済)

次に、4点目「地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり」についてです。
産業の振興や担い手の育成を進めることで、にぎわいと活力あふれるまちづくりを進めます。コロナ禍の長期化で企業の経営は依然厳しいものがあります。売上の減少や、原材料価格の高騰などの終わりが見えない中、コロナ禍で借り入れた融資の返済が本格的に始まっています。企業の皆さんからは、将来を見据えた経営強化の必要性は感じているものの、新たな取組みをする余裕がないとの声が聞こえます。人材不足と言われる中、企業が社員の能力を引き出し、デジタル化などの変化に対応した経営への転換と強化を図ることを目的に、働く人への投資、「人材育成」に前向きに取り組む企業を応援する制度を創設します。
本市の基幹産業である農業に従事されている耕作者は年々高齢化し、農業離れが進む中で新たな担い手の確保が大きな課題となっています。地域の農業を維持していくためには、新たな農業の担い手を着実に育成していくことが重要です。特に農業に関心のある若者、移住希望者や定年退職後に本格的に農業を始める方などに、生産から販売までのノウハウを基礎から学ぶことができる「まいばら農業塾」を新たに開講し、地域や農業者との交流を進めることで担い手の確保を進めるとともに、移住定住や空家対策にもつなげてまいります。

5.心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり(都市基盤)

次に、5点目「心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり」についてです。
鉄道を核に地域の拠点をつくり、にぎわいと定住を支える基盤を整備します。市民の皆さんに大きな期待と注目をいただいている、米原駅東口まちづくり事業につきましては、企業の技術開発を支援する「滋賀県東北部工業技術センター」が、令和7年度の運用開始に向け、設計・工事が令和5年度から始まることや、本市が選定を受けた「脱炭素先行地域」に東口周辺が含まれていることなど、新たな動きが生まれています。コロナ禍や世界情勢の変化を受け、経済、社会も大きく変革する中、これまでの経験と反省を踏まえた、民間企業のニーズや進出意欲を把握するための調査を実施し、より民間企業が進出しやすい環境を整え、現実をしっかりと捉えながら県とも連携し、着実に前へ進めてまいります。
地域の重要なインフラであり交通の拠点でもある駅の利便性と利用促進を図るため、令和5年度は、JR近江長岡駅にエレベーター等を設置するバリアフリー化工事を進めるための実施設計業務に入ります。また、JR柏原駅前の整備や情報板の設置等の駅周辺の環境整備を進めてまいります。
空家対策については、地域の良好な景観を守ることや、防災面での不安の解消を進めなければなりません。市では、空家所有者への適切な管理を促すと同時に、まいばら空き家対策研究会と協働し、移住希望者に対して丁寧なマッチングを行っております。令和4年度は、20件にのぼる成約実績を上げるなど、これは令和4年12月末時点で県内トップを誇っています。また、移住に対する不安を解消するため、地域おこし協力隊とともに、移住希望者との交流を進めてまいります。
暮らしを支える道路の整備を進めるため、令和5年度は道路網整備計画の見直しに着手し、社会情勢等の変化に応じた整備路線の計画策定を進めます。

6.まちづくりを進めるための基盤(都市経営)

最後に、6点目「まちづくりを進めるための基盤」についてです。
多様な主体と住みよいまちづくりに取り組み、社会の変化に対応した健全で持続可能な行政運営を進めます。本市の地域力の源である自治会は、自立した持続可能な地域づくりの担い手であり、大切なパートナーであります。自治会を取り巻く環境は転換期を迎えており、人口減少や働き方が変化する中で、自治会役員の負担感や担い手不足が課題となっています。米原市では、そのための支援策として、自治会サイトを開設し、自治会運営のデジタル化による負担軽減や、自治会パートナーシップ交付金の創設による地域力の強化を応援してまいりました。これまで、人との接触がコロナ禍によって長らく制限されてきた結果、本市の大きな力、強みのひとつである「地域の人のつながりや交流」が、なかなか取り戻せていない、復活できていないことに危機感を感じています。そこで、自治会内での人の交流を後押しするため、従来からある自治会パートナーシップ交付金に、地域行事やイベントの開催を支援するメニューを新たに追加し、大切な地域の人のつながりを取り戻してまいります。次に、行財政改革にも取り組みます。行政運営の効率化に向けては、国の交付金を活用しながら、庁内業務のデジタル化を進めています。令和5年度は、職員採用における、インターネットを活用したウェブ面接の実施や、定型的な反復作業を自動化するRPAツールの導入を行うとともに、電子決裁や庁内文書の電子化に向けた取組など、効率的な業務への転換を進めてまいります。
また、業務のデジタル化には、職員の理解と知識を高めることが必要であり、デジタル技術を活用した業務の効率化や、持続可能なまちに向けた意識を高める研修等を実施し人財育成にも取り組みます。
公共施設や公有財産の最適化は、将来世代に持続するまちをしっかりと引き継ぐためにも避けて通れない課題です。伊吹・近江両市民自治センターの再編に向けた協議を加速させるほか、旧米原庁舎跡地の売却をめざし、令和6年度に公募等ができるよう進めてまいります。
また、醒井水の宿駅の解体など、公共施設等総合管理計画の着実な推進に取り組んでまいります。さらに、公用車の削減を進めるほか、市役所本庁舎が駅前に位置する優位性を活かして、民間によるカーシェアリングサービスなどの新たな公用車の運用方法を検討してまいります。
このように庁舎の統合による経費削減と行政運営の効率化を図ってまいります。また、財源の確保もしっかりと進めてまいります。ふるさと納税は、返礼品である市の特産品が人気を集め、年々寄付額が増加しており、本市が取組む課題解決に向けた施策の大きな財源となっています。あらためて、寄付いただいた方々へお礼を申しあげるとともに、今後も本市の魅力を全国に発信し、寄付による応援に期待するものであります。さらに、国や県の交付金等を積極的に活用するとともに、国、県および関係機関への要望活動や情報収集を行うなどしながら、補助金等の財源の獲得に注力いたします。また、法人市民税の税率改正など独自の取組を進め、公正、公平な賦課課税の実施と、収納率の向上をはじめとする安定的で効率的な財源を確保することで、持続可能な市政運営に努めてまいります。

結び

気候変動や少子高齢化、社会のデジタルシフトへの対応などの課題は、私たちの暮らしに大きな転換を迫っています。グリーン化、デジタル化をはじめとする、世界的な大きな潮流が加速し、コロナ禍、自然災害の頻発など、これまでの前提は崩れ、想定外が起こる不確実性の時代であるからこそ、米原の未来を確かなものにしていかなければなりません。令和5年度は人口減少という大きな壁に果敢に挑戦し、これに真正面から立ち向かう一年にしたいと思います。
私の任期も3年目を迎え、折返しの後半が始まります。今一度、私たち市役所の基本は「人が真ん中」、「市民が真ん中」であることを大切に考え、市民の声に「共感」し、「共感から生まれる施策」を進めていくため、令和5年度は「共感予算」と名付けました。やらなければならないことを、責任を持って実行し、米原の未来を市民の皆さんとともに創る、「住みよさ実感、米原市」を実現してまいります。
市議会議員の皆さまをはじめ、市民の皆さまに格段の御理解、御協力をお願い申し上げ、令和5年度の施政方針とさせていただきます。

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