施政方針(令和4年第1回米原市定例会)

更新日:2022年03月28日

令和4年度 米原市施政方針

はじめに(令和3年度の振り返り)

本日、令和4年米原市議会第1回定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、公私ともに御多用の中、御出席を賜り、厚くお礼を申し上げます。

庁舎の完成

昨年5月、合併以来の念願であった米原市役所新庁舎が完成いたしました。ひとえに、これまで米原市政を支えていただきました市民の皆さまをはじめ、市議会議員の皆さま、多くの関係者の御支援と御協力の賜物であり、この場をお借りし、改めてお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
この庁舎のコンセプトは、人々が集い、つながり、広がる、新幹線が停車する駅前という優れた立地を生かし、新たな人の流れとにぎわいを創り出すことであります。
市役所が完成し、市民交流エリアにある市民活動スペースや屋上広場では、毎日のように家族連れや学生、子どもたちが気軽に訪れていただいており、アットホームな雰囲気が生まれています。
さらに、この春には庁舎3階の市民活動スペースの一角に米原駅直結のコワーキングエリアがオープンし、夏には庁舎と米原駅の自由通路を直結する連絡通路が開通する予定です。
同じフロアには米原駅観光案内所もあり、米原駅を核とした広域観光、交流の拠点として本市を訪れる人たちの利便性を高めると同時に、今までの市役所のイメージを大きく変え、人が集い、つながり、広がっていく起点となって、米原駅周辺、滋賀県の東の玄関口という本市のポテンシャルを発揮し、市内全域に交流や広がりの効果を波及できる米原新時代へと深化させてまいります。

コロナ対策

さて、新型コロナウイルスとの闘いが始まってから2年が経過しようとしています。これまで、市では、ウイルスから市民の生命(いのち)や暮らしを守ることを最優先に、感染予防、感染拡大防止対策を進めてきました。また、ワクチン接種も接種対象者の約90%の方が2回目の接種を終え、先月からは3回目の集団接種が始まったところですが、まだまだ感染拡大は収まる気配を見せておりません。
接種が始まった当初は、インターネットで予約する方法について、市民の皆さま、特に高齢者の皆さまに混乱を招いたことから、急きょ、自治会にも御協力いただき、接種予約や接種の声掛けなどの地域に寄り添った温かい支援をしていただきました。大変お世話になり、ありがとうございました。
3回目の接種についても、昨年11月から順次、対象者の方に御案内させていただいており、予約に不安を感じる方には、市役所本庁舎のほか、山東支所や市民自治センターでも予約できる体制を整えております。
さらに、5歳から11歳までのお子さんへの接種については、近江診療所、市保健センター、市内の開業医で接種を開始する予定をしております。
また、外出自粛等に伴い、売上げが大幅に減少した事業者の皆さまには、減収緩和支援金の給付や販売促進キャンペーンなどを実施し、地域経済の活性化、事業者を応援する取組も進めてきたところです。
集団で行動することが多い学校や保育施設などでは、感染対策を徹底するとともに、子どもや職員などに感染者が出た場合も、感染経路の把握や、学校・園内の感染拡大のおそれがないかを見極めながら、できる限り学びの保障や保育の確保に努めてきたところです。
しかし、残念ながら、一部の学校や保育施設では、臨時休業などの措置を取らざるを得ない状況となってしまいました。この間、児童生徒には、学校のタブレット端末を持ち帰っていただき、健康状況の確認やAI(えー・あい)ドリルの繰り返し学習などを行っていただきました。
高校入試や学校・園生活の一年を締めくくる非常に大切な時期に、このような状況が重なってしまいましたが、保護者の皆さま、学校園の支援ボランティアの方をはじめ、関わっていただいています地域の皆さまには、これまで大変な御協力や御支援をいただき、感謝を申し上げます。
まだまだコロナの終息を見込める状況ではありませんが、今後も市民の生命(いのち)と健康、安全を守ることを最優先に、市民に身近な米原市役所だからこそできる、市民に寄り添った対策を皆さまの御理解、御協力を賜りながら、強力に推し進め、この困難を乗り越えていきたいと思います。
しかし、目の前の対策だけに追われるのではなく、ポストコロナに向けた動きに乗り遅れることなく、多様な変化への柔軟な対応ができる市政運営を進めなければなりません。
市民の皆さまと約束した政策を着実に実行するため、庁舎統合による効率化を最大限に発揮し、その効果を市民の皆さまに実感していただくことが私に課された最大の使命だと感じております。

令和4年度最重点施策とする取組

令和4年度 市政運営の基本方針

さて、私が第4期目の市長に就任してから早くも1年が経過しようとしています。
この間、市民の皆さまとお約束した政策を実行するため、市政運営を進めてまいりました。
任期2年目を迎える令和4年度は、米原新時代の深化に向けて、さらなる行政機能の発揮と市民サービスの向上を目指し、重点取組事項を中心に施策の再構築と、本市の新たな価値を創造する年にしてまいります。

令和4年度重点取組事項

  1. 持続可能なまちへの取組
    1点目は、持続可能なまちへの取組です。
    (気候変動・環境問題)
    近年、国内外でさまざまな異常気象による災害が多発、常態化しつつあります。これは、地球温暖化と密接な関係があると言われており、IPCC(アイ・ピー・シー・シー)気候変動に関する政府間パネルの報告書でも「人間の活動の影響により、地球が温暖化していることは疑う余地がない。」とされています。今後も豪雨や猛暑のリスクが更に高まることが予想され、水資源や生態系などの自然環境への影響だけでなく、私たちの健康や、地域の産業・経済活動などへの影響も指摘されています。
    こうした状況は、もはや単なる「気候変動」ではなく、私たち人類や全ての生き物にとっての生存基盤を揺るがす「気候危機」とも言われています。
    市民の暮らしや生命(いのち)に向き合う基礎自治体として、この問題に立ち向かい、将来の世代も安心して暮らせる、持続可能な経済社会、脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現に向けて積極的に取り組まなければいけないと考えています。
    (営農型太陽光発電施設補助)
    そこで、市民の皆さんと地球温暖化の問題意識、脱炭素の意識を共有するため、その第一歩として「気候(きこう)非常事態宣言」を行います。さらに、この宣言をきっかけとして、米原市環境基本計画や地球温暖化対策実行計画を見直すほか、国において2030年度までに100か所以上が指定される「脱炭素 先行地域」に名乗りを挙げ、農地における、農業を継続しながら太陽光発電施設を設置する取組への支援や、地元企業と連携した太陽光エネルギーの利活用など、脱炭素に向けた公民連携などの取組を進めます。
    (デジタル化推進)
    コロナにより、オンラインでのサービス利用が急速に広がり、今や多くの方がスマートフォンやタブレットを使いこなし、利便性を実感されていることと思います。
    しかし、高齢者の方にとってはデジタル活用に不安のある方が多く、また、「電子申請をできること自体を知らない」などの理由で、オンラインによる行政手続などの利用が進んでいない現実もあります。
    これからの社会は、デジタル化は避けては通れない流れであり、令和4年度は行政のデジタルトランスフォーメーションの推進体制を強化するため、デジタル化に精通した民間人材の活用など、民間企業と連携しながら、市民サービスや手続のワンストップ化、1回で完結するワンスオンリーの実現や、誰も取り残さないやさしいデジタル化など、デジタルを最大限活用する自治体運営への変革に取り組んでまいります。
    また、市民生活や地域におけるデジタルトランスフォーメーションの取組としては、昨年、試行的に行った初級者向けのスマートフォン講習会が好評であったことから、学びあいステーションを会場にスマートフォンの使い方講習会を実施するとともに、今後、行政手続のオンライン化に不可欠なマイナンバーカードの利用を促進するため、引き続き、特設会場を設けてカード取得のための手続を支援します。
    (平和の礎)
    昨年の平和祈念式典において、私は「戦争体験者の方々の高齢化が進み、戦争の記憶が失われつつある、戦争体験者から教えていただいた戦争は悲しみと憎しみしか生まないこと、核兵器は人類と共存できない壊滅的な被害をもたらすもの、そして平和の大切さを次の世代に伝えていなかければならない。」と訴えさせていただきました。
    市内にある戦没者を慰霊する忠魂碑は、遺族の皆さまによって大切に守ってこられましたが、今後ますます高齢化が進み、守る人がいなくなる現実が目の前に迫っており、今後の在り方について議論するには時間的な余裕がなく、大きな課題であります。
    いまある平和を守り、戦争犠牲者の厳粛な事実を後世に確実に引き継いでいくため、すべての戦争犠牲者を慰霊し、恒久平和を祈念する「平和の礎(いしずえ)」整備に向けた取組を着実に進めてまいります。
  2. ひとが集い、若者世代が移り住むまちへの取組(人口減少対策)
    2点目は、ひとが集い、若者世代が移り住むまちへの取組です。
    昨年公表された令和2年の国勢調査では、日本の人口減少が進行している実態が一段と鮮明になりました。さらに、全国の半分以上の自治体が「過疎地域」に指定されるなど、都市部と地方で人口の差が広がり、二極化が顕著となっています。
    少子高齢化という構造的な問題を抱える中で、新型コロナウイルス感染症、デジタル化の進展、市民のライフスタイルや価値観の多様化、脱炭素やSDGs(エス・ディー・ジーズ)の実現に向けた国際的な潮流、さまざまな人権に配慮した多様性の尊重など、これまでにない新しい課題に対応することが求められています。
    一方、コロナ禍により、テレワークや在宅勤務が広く社会に浸透し、東京などの都市部に人が集中する動きに変化が起こっています。東京離れや地方都市への移住希望が増えているこうした変化は、地方への関心の高まりにもつながっており、この流れをつかみ、都市部からの優位なアクセス性を最大限に生かした、米原だからこその暮らし方、新しい価値をつくらなければならないと思っております。
    (新幹線通勤支援制度・サテライトオフィス誘致)
    滋賀県唯一の新幹線停車駅である米原駅では、新幹線の定期券を利用する方が約600人おられます。そこで、4月以降に市内に転入されて住宅を新築または購入される方のうち、米原駅を利用して新幹線で通勤される40歳未満の方を対象にした、関西初の新幹線通勤支援制度を創設し、大都市勤務の若者世帯の移住やU・Iターンを促進していきます。
    また、高い交通アクセス性と豊かな地域資源の双方を併せ持つ本市の特徴を生かし、サテライトオフィス等の開設や移転に係る経費を支援し、大都市勤務の若年世帯を対象とした移住定住の促進やサテライトオフィス等を活用した企業誘致に取り組みます。
    (空家再生みらいつくり隊)
    市内の空家が増える中、地域の景観や防災面から、不安や懸念が寄せられています。市では、まいばら空き家対策研究会と協働し、移住希望者と空家との丁寧なマッチングにより、県内で一番多い成約件数を誇っています。
    この体制を更に充実するため、地域おこし協力隊制度を活用した空家再生みらいつくり隊員を2人配置し、空家の掘り起こしや民間事業者と連携した空家の流通促進などを図るとともに、空家を活用した新たな働き方や価値を創造し、地域の活性化を図ってまいります。
    (国民健康保険の子育て世帯への応援金給付)
    子育て世帯の経済的負担の軽減を図るため、国では令和4年度から国民健康保険税のうち、未就学児に係る均等割の軽減措置を導入します。
    市では、これに加えて独自の支援策として、18歳以下の子どもに係る均等割が実質ゼロとなる応援金を支給いたします。
    (中学校入学応援)
    新中学1年生が入学するとき、新しい制服や体操服、通学用などの自転車の購入、さらに入学後の部活動に必要な用具やトレーニングウェアなど、家計への新たな負担がかさみ、更にはコロナの影響によって、家庭への負担がより大きく、かつ深刻になっている実態があり、子どもたちは、こうした家庭の状況を敏感に感じ取るようにもなっています。
    子どもたちが、安心して中学校に進み、自身が入部したい部を選択して、より充実した中学生活を送ることができるよう、新中学1年生を対象とした入学支援金制度を創設します。
    (給付型奨学金)
    若者の学びの機会を保障し、米原市の将来を担う人材を育成するとともに、卒業後の市内定住を目的とした給付型奨学金制度は、創設から4年が経過し、制度を活用して卒業された若者12人のうち、11人が市内に定住してくれており、一定の成果が出ているものと実感しています。
    これからも若者たちの学業支援の一助となるよう、所得制限の緩和と、人材が不足している医療や介護、保育分野などの専門職種への特別枠を新設し、制度を拡充して募集を行ったところであり、引き続き、若者の定住につなげてまいります。
    以上、令和4年度の最重点施策とする取組について申し上げました。
    続きまして、第2次米原市総合計画に掲げる6つの基本目標に沿った取組を着実に推進する、令和4年度の主要事業について御説明申し上げます。

令和4年度 主要事業

令和4年度 主要事業(総合計画に掲げる6つの基本目標に沿った取組)

  1. 健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり(福祉)
    まず、1点目「健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり」についてです。
    保育需要については、年々、保育の利用希望者が増加傾向にあり、令和3年度には初めて低年齢児で待機児童が出るなど、保育の受入れに影響が出てきています。さらに、米原小学校区で大規模な住宅開発計画が進んでおり、今後の保育需要が大幅に増えることが見込まれます。市では、令和6年4月開園に向けて、保育の受け皿を確保するため、新たな保育施設の整備に向けた民間事業者の公募を行います。
    保育や幼児教育の現場では、通常業務に加え、コロナ対応が重なり、職員の負担も増えています。保育の最前線で働く職員の処遇改善を図り、適切に給与に反映されるよう、改善に向けた調整と実態把握に努めます。
    また、令和3年度に創設した保育士等奨学金返還支援の助成を継続するほか、新たに市内保育所等に就職する保育士への家賃支援を行います。さらに、保育士をはじめとする福祉人材を確保するための就職フェアを開催し、市内の園や事業所での働きやすさや魅力を積極的に発信することで、就職前から就職後までの切れ目のない支援を行い、人材確保と保育の質の維持向上に努めていきます。
    高齢化の進展により地域住民の複雑、複合化した支援ニーズが増える中、コロナの影響による生活困窮に関する相談も増えています。一方で、8050(はちまるごーまる)問題や引きこもり、社会や地域からの孤立など、自ら声をあげられない潜在的相談者も増えてきていると予想されることから、令和4年度は市民からの相談に寄り添い、伴走する包括的な支援体制を更に強化し、重層的支援体制整備事業を展開していきます。
    コロナ禍による生活環境への影響が続く中で、仕事や生活に不安やストレスを感じている人が増えており、市民の生活の質を高め、心と体の健康寿命を延ばす取組を推進することが必要です。現在、「健康まいばら21(にじゅういち)計画」、「いのちを支える自殺防止対策計画」、「いきいき食のまちづくり計画」について、それぞれ計画ごとに取組を進めてきましたが、市民の実態を把握し、実効性のある市民の健康づくりへの取組を進めるため、3つの計画を「第3次健康まいばら21(にじゅういち)計画」にまとめ、市民の健康づくりを一体的に推進していきます。
  2. ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり(教育・人権)
    次に、2点目「ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり」についてです。
    子どもたちを取り巻く環境は、少子高齢化やデジタル化の進展、そしてコロナによる学校生活や家庭生活が様変わりしており、変化の激しい現代社会を生き抜くたくましさと逆境や困難にあっても折れない心を持つしなやかさが必要となっています。
    私たち大人が、子どもたちの夢や志が実現できる社会、環境をつくり、自分で未来を切り開いていけるよう、家庭や学校、地域と一緒に子どもたちに寄り添っていくことが重要です。
    何らかの理由で学校に行けず、不登校の状況になっている子どもたちに寄り添い、学ぶ意欲を持ち続けてもらえるよう、教育支援センター「みのり」を運営するとともに、新たに民間のフリースクールを利用する児童生徒に対し、その利用に係る費用を支援する制度を創設し、子どもたちの通いの場を確保し、将来の社会的自立に向けた学びを支援します。
    また、学校や家庭での子どもたちの悩みやいじめ問題などに対して、よりきめ細かく悩みに寄り添い、いじめの未然防止や早期対応、心のケアにつなげるため、県のスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーに加え、市独自のスクールカウンセラーを配置し、子どものさまざまな課題解決に向けた相談助言や保護者に対する相談などの支援を拡充します。
    さらに、学校や給食センター、学びあいステーション、体育施設などの教育施設については、緊急性の高いものから、順次計画的に大規模修繕などの整備を進め、施設の長寿命化を図るとともに、適切な維持管理を行い、子どもたちや利用者の皆さんにとって、安全・安心で、快適な環境づくりを目指します。
    これらに加え、各学校と教育委員会事務局、学校間のネットワークの構築と、統一した校務支援システムを導入し、教職員の働き方改革や校務の効率化を図り、教職員が児童生徒と今まで以上に向き合うことができる環境づくりを進めます。
    文化財の保護活用については、過疎化や少子高齢化などを背景に、市内においても文化財の滅失や散逸などが課題となっています。地域の皆さんと一緒に貴重な歴史文化を次世代に継承するとともに、魅力の再発見とまちづくりや観光振興に生かすため、昨年度に引き続き、市内全域の文化財を調査し、文化財保存活用地域計画を策定します。また、国史跡指定を目指すため、河内地先にある八講師城(はっこうしじょう)の遺跡緊急調査を行います。
    昨年開催された東京オリンピックでは、本市出身の6人がホッケー代表として出場され、世界の強豪相手にゴールを決めるなど、素晴らしい活躍と子どもたちに夢と希望を与えてくれました。
    ホッケーのまち米原として、令和7年に滋賀県で開催が予定されている国民スポーツ大会ホッケー競技大会を見据えて、ターゲットエイジを含む選手の育成強化支援や開催受入れ準備、ホッケー競技の裾野を広げる活動などを積極的に行い、本市のホッケーの認知度向上と普及促進に取り組みます。
    また、同時に開催される全国障害者スポーツ大会を通して、障がいのある方がスポーツを楽しむことを応援するとともに、パラスポーツや障がいに対する理解を深める啓発にも積極的に取り組みます。
    一昨年、男女共同参画推進計画に係る市民意識調査を行ったところ、DV被害を相談しなかった人が半数以上という結果となり、まだまだ相談や支援体制が十分とは言える状況ではありません。
    この3月に改訂を予定しています次期計画では、DV早期発見のための体制整備と相談体制の充実に取り組むこととしており、被害者が一時的に避難できる民間シェルター等の設置支援など、DV被害者支援の体制を整備するための検討を始めます。
  3. 水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり(環境・防災)
    次に、3点目の「水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり」についてです。
    国定公園であり、日本百名山の一つである伊吹山は、年間約25万人の人が訪れる本市のランドマークですが、近年の気候変動や獣害等により、生態系への影響や登山道の被害が深刻な状態です。毎年、環境保全団体と協働し、山頂などの植生防護柵の設置や登山道整備を行っていますが、特にシカの個体数が増え、駆除を行わないと山を保全できない状態であることから、猟友会と連携して伊吹山での捕獲を強化するほか、「伊吹山を守る自然再生協議会」を総括する滋賀県に対しても積極的に対策に関わっていただくよう、強く要望してまいります。
    昨年末に続き、今月6日に本市を襲った大雪は想定を超える降雪量となり、市内では積雪が91センチに達し、統計を取り始めた2001年以来、観測史上1位となる豪雪に見舞われました。雪に慣れている私たちにとっても、尋常ではない積雪量に驚いたところです。昼夜を問わず、除雪作業に従事いただいた業者の皆さまや、地域での支え合いに御協力いただきました自治会等の皆さまには、改めて感謝を申し上げます。
    また昨年末の大雪では、2日間に渡りJRなどの交通機関が寸断され、米原駅付近で動けなくなった駅利用者などの帰宅困難者を市役所コンベンションホールで受け入れさせていただきました。改めて、災害は地震や大雨だけではないことを認識したところであり、自主防災組織や地域における防災拠点の災害対応力の強化に向けた資機材の備えを充実させるとともに、市民の皆さんに対し、必要な情報を迅速に発信、共有するため、防災アプリや伊吹山テレビと連携した情報発信を強化してまいります。
    現在、湖北地域全体の消防力適正配置のため、消防署所(しょうぼうしょしょ)の再編が行われています。市内にある消防署と出張所の再編を行い、消防署を天満地先へ、出張所を西円寺地先に統合・移転するための用地取得を進め、均衡のとれた配置とすることで、機動性や他機関との連携を高めるとともに、市民の生命(いのち)と財産を守る常備消防の充実を図ります。
    また、市民を守る消防団の機動力を強化するため、団員の消防技術や救助能力の向上に必要な訓練や資機材配備を進めます。さらに、高齢化などにより、消防団員の担い手確保が課題となっていることから、自治会と協議しながら統合整理を含めた組織再編に取り組み、持続可能な消防団組織の構築を目指してまいります。
    本市は、原子力発電所から概ね半径30キロメートルを目安としたUPZ(ユー・ピー・ゼット)圏内の自治体に隣接しており、万一の原子力災害に備え、安定ヨウ素剤の備蓄を進めてきました。令和4年度は、実際の避難体制の検討や、安定ヨウ素剤の備蓄・事前配布体制などの準備について、専門家や学校、市民の御意見を聞きながら、実行に向けた取組を進めます。
    市民生活に欠かせないインフラである上下水道は、年々老朽化が進み、その維持管理も大きな課題となっています。
    将来にわたり、安定した水の供給や衛生環境を整え、市民の生活を守っていくため、施設の長寿命化と強靱化をしっかりと進めていきます。
    また、災害時、確実に水を供給できる基盤を確保するため、広域避難所への重要管路である配水管の耐震化事業を優先して進めるほか、磯浄水場の耐震補強工事を進めます。
  4. 地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり(産業経済)
    次に、4点目の「地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり」についてです。
    コロナ禍で観光のあり方やスタイルが大きく変化しているなか、本市の最大の強みである米原駅を徹底活用し、周遊観光の促進を図ることで、交流人口から関係人口、移住人口の増加に結び付ける米原だからこそできる観光施策の推進に取り組んでまいります。
    特に、米原ならではの体験プランを掘り起こし、新たな観光資源として体験型観光に磨きを掛け、情報発信、販路の確保、継続支援までをトータルで支援する取組を始めます。
    また、新たに旅行業者が企画する市内周遊ツアーに対する補助金制度を創設し、市内周遊観光を促進する事業に取り組みます。
    さらに、地域活性化企業人制度を活用し、観光地域づくりの舵取り役となる観光地域づくり法人の登録を進めるなど、一般社団法人びわ湖の素DMO(ディー・エム・オー)の運営を支援します。
    本市の基幹産業である農業ですが、年々耕作者の高齢化に伴う農業離れや耕作放棄地が増え、さらに耕作者にとって必要不可欠な農業機械の購入や維持管理は大きな負担となっています。そこで、国の支援制度の活用が難しい、中小規模農業者に対する機械購入費用を支援する制度を創設し、農業者の離農や耕作放棄地の抑制、経営基盤の強化など、営農の継続を下支えすることで本市の基幹産業である農業を守ります。
    また、農業者が安定的に農業経営を行うことができるようにするためには、稲作だけではなく、野菜や花卉(かき)、果樹などの園芸作物の栽培にも取り組み、農業経営の複合化を行っていく必要があります。園芸作物の栽培に必要な経費やハウスの設置などに対する支援を行い、農業経営を安定させるとともに、新規就農者の拡大へとつなげていきます。
    獣害対策マスタープランの推進により、自治会の協力を得ながら、獣の侵入防止柵の設置が進み、農作物の被害は減少傾向にあります。しかし、近年の自然災害や劣化による破損が進み、柵の維持管理、修理などが自治会の大きな負担となっていることから、引き続き、進入柵の設置、自然災害等で破損した柵の復旧に要する経費のほか、新たに日頃の維持管理に必要な簡易な修繕に要する経費に対しても助成を行います。
    また、新たにモデル地区を設定し、サルの位置情報を把握できるシステムを使い、その情報を自治会と共有することで、被害の未然防止や軽減につなげます。
    森林所有者の世代交代や集落外への転出が進み、境界不明の森林が増えています。このままの状況が続きますと、災害時の被害復旧や間伐など山の保全を進めることが困難となり、ますます山の荒廃が進んでいきます。そこで、温室効果ガスの削減や災害防止等を図るための森林整備に必要な地方財源である森林環境譲与税を活用し、専門的知識を有する地域林政アドバイザーを置き、境界の明確化を進め、森林整備の効率化を図ります。
    コロナの影響により、市内の経済はこの2年間で大きなダメージを受けています。これまで事業者の減収支援や売上促進キャンペーンなどを行ってきましたが、市内経済の回復には至っておらず、市内の経済を支える中小企業者への支援は、国や県とともに早急に取り組まなければなりません。
    強靱(きょうじん)かつ自律的な地域経済の構築に向けて、新たに会計システムや原価管理システムなどのIT等を活用した事業の生産性向上を目的とした取組や、自ら企画した顧客を呼び戻すための販売促進キャンペーンなど、事業者自身の取組に対し、支援を行います。
  5. 心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり(都市基盤)
    次に、5点目の「心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり」についてです。
    公民連携で取り組んできました、米原駅東口周辺まちづくり事業については、今年度内に滋賀県との土地交換が完了する予定です。
    また、昨年、みずほ銀行と締結した「地域DX(でぃー・えっくす)推進に向けた連携協定」による新しい動きも生まれつつあり、引き続き、一般社団法人 米原駅東口まちづくり協議会や民間企業と連携しながら、滋賀の東の玄関口にふさわしい、賑わいのあるまちの実現に向けて取り組んでまいります。
    日本全体で人口減少が進む中、コロナ禍で地方への注目が集まり、都市部周辺への転出者が増えておりますが、依然として地方の人口減少幅は大きく、このままでは更なる人口減少や高齢化が進み、ますます都市部への一極集中が加速してしまいます。
    市内への人口流入を増やし、活力ある米原市をつくるため、限りある国土の有効活用を進める指針となる国土利用計画を策定し、令和6年の都市計画定期見直しに向けて、米原駅および坂田駅周辺の市街化区域の拡大や、豊かな自然や田園風景との調和を目指す方向性を示し、魅力あふれる住環境や都市機能を創出・誘導する都市計画を推進します。
    昨年実施した市民意識調査では、公共交通への市民満足度は、ほかの施策に比べて低い結果となっており、バスの路線や運行本数が少ない、乗合タクシーの予約に手間が掛かるなどといった御意見をいただいています。
    市では、昨年からまいちゃん号のインターネット予約の導入や、運行本数の増便など、利便性の向上に取り組んできました。しかし、高齢化や免許返納の進展などにより、今後、利用者と市の財政負担が増えていくことが見込まれ、サービス水準の維持向上と併せて、財政負担の抑制が課題となっています。
    市民の移動手段である公共交通を今後も持続可能なものとするため、米原駅を起点とする路線バスの再編を事業者とともに進めるほか、乗合タクシーの料金改定と併せまして、高齢者等の交通弱者や生活利用の多い市民にとって欠かすことのできない移動手段であることから、新たに利用料金の割引制度を創設いたします。
    近年、住宅地開発や商業施設の進出などの開発が進み、人口が増加している坂田駅周辺の環境整備を進めるため、送迎時の一時停車スペースの拡張など坂田駅前ロータリーを改修し、駅利用者や市民の利便性向上を図ります。
    市内の均衡ある発展と一体性のあるまちづくりを推進し、道路整備を計画的に進めるため、道路網整備計画に基づき、市内の道路整備を進めます。また、子どもたちの通学路の安全対策を進め、市民の皆さんが安全・安心に運行できる道づくりを着実に進めます。
  6. まちづくりを進めるための基盤(都市経営)
    最後に、6点目の「まちづくりを進めるための基盤」についてです。
    市では、これまで地域力を強化するため、自治会に対し、さまざまなお願いや支援を行ってまいりました。しかし、少子高齢化、自治会運営の担い手不足、定年の延長などにより、働く現役世代が増えている中で、自治会運営も大きな転換期を迎えています。
    自治会の力、地域力は本市の大きな強みであり、今後も持続可能な地域づくりの担い手、パートナーとなっていただくため、従来の自治会パートナーシップ事業を拡充し、除雪ボランティアによる除雪支援や、獣害防止柵の維持管理などの新たな支援メニューを追加した自治会パートナーシップ交付金を創設し、市が重点的に推進する取組や地域力の強化につながる取組を支援します。
    また、自治会専用サイトを立ち上げ、自治会との連携強化や申請手続きなどのデジタル化による自治会長の負担軽減に取り組みます。
    行政運営の拠点である市役所も統合庁舎が完成し、分散されていた市役所業務の集約、山東・伊吹地域の拠点である山東支所の整備、そして、市民に身近な窓口として近江、伊吹地域に市民自治センターを配置し、市役所機能の強化を図ってまいりました。
    現在、ワクチン接種に利用している旧米原庁舎は、9月を目途にその利用を終えることから、旧米原庁舎跡地の利活用を進めるため、自治会に対し、不用となった備品類の譲渡を進めるとともに、庁舎解体後の土地売却を目指し、解体工事を進めます。
    合併から17年が経過し、市内には庁舎をはじめ、260の公共施設が存在しています。市民サービスの提供と地域振興に不可欠な公共施設は、長寿命化に向けた改修を進めるなど、適正に維持管理をする必要があります。一方、これらの公共施設の維持管理経費も継続して必要となることから、施設数の削減を図りながら、将来の計画的な大規模改修に備えることが重要です。
    本年度、公共施設等総合管理計画の見直しを行い、今後の公共施設の在り方について一定の方向性をお示ししました。今後はこの方針に基づき、公共施設の維持や再編を進めていきます。
    これまでの行政経営の在り方を見直し、未来につなげる持続可能な行財政基盤を確立するとともに、職員の意識改革と働き方改革、行政経営および地域経営の改革を着実に実行しなければなりません。
    その取組の一つとして、今年度実施した補助金の見直しでは、専門家の意見も聞きながら、補助金の必要性や手法、実効性などを洗い出し、検討を進めてきました。令和5年度に向けて、関係団体などと協議をさせていただきながら、引き続き、適正化に向けた検討を進めてまいります。
    また、令和4年4月から10年間、観光関連施設であるグリーンパーク山東と近江母の郷文化センターの2施設に対し、PFI事業を導入いたします。今後も将来的な市の財政負担の軽減や持続的な公共サービスの提供につながる民間活力を積極的に活用し、効果的で効率的な行政経営を推進してまいります。
    併せまして、税の公正、公平な賦課課税の実施と収納率の向上をはじめとする財源の確保を図り、中期財政計画に基づく健全な財政運営を堅持してまいります。
    市政を進めていくうえで、市民に寄り添い、地域の声に耳を傾ける職員、現場力を持つ職員の力が不可欠です。市役所が統合し、地域の現場から市役所が物理的にも精神的にも遠のき、取り残されているというお声も聞いています。
    私たちは、このマイナス面を克服し、プラスの動きに転換するため、全職員の力を最大限に発揮し、市民の皆さまとの信頼関係を再構築していくことに尽力し、結果を出して、評価が得られるよう、これまで以上に職員一丸となって取り組んでまいります。

結びに

今回の議会にも議案として提出させていただいています、米原市の将来に向けた指針となる第2次総合計画の見直しでは、市民の方からさまざまな御意見を賜りました。
特に、今後、人口減少や若年世代の流出などが一層進むことにより、持続可能なまちづくりが困難な状況になることに危機感を持ち、まちの将来像の実現に向けて、市民と一体となって、市政に取り組んでいくことを強く要望いただきました。
コロナ感染症を経験した、この2年余りで見えてきたことは、私たち市役所が進めてきた市民の暮らしや文化、福祉の課題について、改めて問い直す大きなきっかけとなったと同時に、中央や東京ではない、地方に注目が集まり、田舎こそが暮らしや生命(いのち)というテーマについて真剣に取り組み、解決策をつくることができる時代を迎えたと思っています。
令和4年度は、社会を取り巻く情勢や時代の潮流を適切なタイミングで、的確につかみながら、市民の皆さまと一緒に、米原市が成長する新しい価値とエンジンを生み出し、米原新時代の更なる深化と持続可能なまちづくりに取り組んでまいります。
市議会議員の皆さまをはじめ、市民の皆さまに格段の御理解、御協力をお願い申し上げ、令和4年度の施政方針とさせていただきます。

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