施政方針(令和3年第1回米原市定例会)

更新日:2021年03月17日

令和3年度 米原市施政方針

【はじめに(所信)】

本日、令和3年 米原市議会 第1回定例会を招集申し上げましたところ、議員の皆さまにおかれましては、御多用の中、御出席を賜り、厚くお礼を申し上げます。

このたびの市長選挙におきまして、市民の皆さまの御支援をいただき、引き続き、米原市政を担わせていただくことになりました。あらためて、市長という責任の重さを感じて、ここに立っています。

新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、厳しい局面に直面されている市民の皆さんのお声や市民生活の実態に真摯に向き合い、市民の力、自治の力で、地域の安心・安全を守り、次の時代を担う子どもたちや若者の夢を実現できる、米原市の更なる進化・発展に全身全霊で市政運営に取り組んでまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

まず、最初に、市政に臨みます私の所信を申し上げます。

私は、これまでの3期12年間、議員の皆さま、市民の皆さまの御理解、御協力を賜り、政策を実現することができました。改めて皆さまに感謝を申し上げます。ありがとうございました。

さて、私は「滋賀県一子育てしやすいまち」を目標に、県内の市町に先駆けて、中学生までの入院を含む医療費の無料化や、第2子以降の保育料の無料化、定住促進を目的とした県内初の給付型奨学金制度の創設など、子育て支援や少子化対策に取り組んでまいりました。また、小中学校のエアコン設置やトイレの洋式化、自治会単位での高齢者の通いの場、居場所づくりを進めた地域お茶の間創造事業、そして、合併以来の念願であった統合庁舎の建設など、市民の暮らしを守り、米原新時代への基盤づくりとなる政策を実行してまいりました。これは、市民の皆さんや事業者、団体の方々から寄せられた、一人一人の思いや願い、希望を政策として立案し、予算化、事業化したものであります。

深刻な少子化と人口減少の時代、さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、市民の皆さんの生活や健康への不安が増している状況にある今、市民の皆さんと一緒に伴走できる体制を整え、安心して頼っていただける市役所の存在が求められています。

市民の皆さんの声が届けられ、課題解決に向けて、ともに取り組んでいくことはもとより、未来を担う若い世代の能力が発揮されるまちの実現に向けて、全力で取り組む所存です。

【政策提案の概要(今後4年間)】

今回の選挙におきまして、44項目の政策を市民の皆さまにお約束いたしました。

1.子ども・女性・若者・高齢者にやさしいまち

1つ目は、「子ども・女性・若者・高齢者にやさしいまち」の提案です。

私は、子育て支援を中心に、保育料や医療費などの経済的負担の軽減に取り組み、市民意識調査による子育てしやすいまちだと思う市民の割合が増えている結果からも、これまでの子育て支援策に対し、一定の評価をいただけたものと感じています。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、新しい生活困難層が急増し、特に女性や若者、障がいのある人や高齢者などは、経済的な困窮や精神的に生きづらさを感じておられます。我慢するしかない、諦めるしかないというのではなく、少数・弱い立場の人たちが助けてと言える、声を出せる社会をつくっていかなければなりません。

3年前に、若者の大学等への進学を応援するとともに、市内定住を目的とした給付型の奨学金制度を創設いたしました。しかし、市民からは、制度の仕組み上、申請したくてもできないという声もあり、さらに、コロナによって、暮らしや雇用、所得に影響が表れています。給付型奨学金制度を、より広く、利用しやすい制度とするため、所得制限枠の拡大を行います。

皆さんは、中学生の部活動の経費、保護者負担を御存知でしょうか。全ての部活動ではありませんが、入部するとき、必要な用具やユニフォームなどを購入するため、3万円から5万円程度の費用が必要です。経済的に恵まれた家庭ばかりではありません。中学生になれば、親の働きや家庭の経済事情を知っています。子どもたちの部活動の選択に、躊躇(ちゅうちょ)や、諦めの現実があるかもしれません。

中学生、義務教育の現場に、家庭の事情や経済的理由で、子どもたちの戸惑いや、偏(へだた)りがあっていいでしょうか。中学校の部活動の保護者負担を軽減し、子どもたちの選択の自由度を広げ、あらゆる可能性を持った中学生のチャレンジを応援する環境を整えてまいります。

障がいのある人やニート、引きこもりの人たちが、やりがいや生きがいを持って社会参画ができる機会や、担い手不足が進む分野での新たな働き手の確保につながる、農福連携や福祉カフェ等の取組を進めます。

2.暮らしに安心・地域が元気なまち

2つ目は、「暮らしに安心・地域が元気なまち」の提案です。

本市の基幹産業である農業を、さらに活力ある産業へと成長させる取組が必要です。

特に、耕作放棄地や中山間地域での農地活用を進め、ソーラーシェアリングによる農作物生産の可能性や、AI(エー・アイ)やIoT(アイ・オー・ティー)などの先端技術を活用したスマート農業を民間事業者と連携しながら進めます。

2011年3月11日、東日本大震災が発生し、巨大津波と原発事故の大災害から間もなく10年の節目を迎えます。あってはならない原子力災害。万が一の事故に備えるため、安定ヨウ素剤の事前配布と家庭備蓄の体制を整えるとともに、市民の皆さんと一緒に、原子力災害の避難行動計画の策定を行います。

3.未来へ、たしかな歩みをはじめるまち

3つ目は、「未来へ、たしかな歩みをはじめるまち」の提案です。

県内唯一の新幹線停車駅「米原駅」。隣接する長浜市、彦根市、高島市および米原市の4市連携によるインフォメーション拠点を統合庁舎内に設置し、京都、大阪、名古屋、そして首都圏からの観光周遊の起点とすることで、新たな人の流れを生み出し、地域経済の活性化と、滋賀県の東の玄関都市、米原市の成長発展を目指します。

さらに、統合庁舎と米原駅東西自由通路を直結する連絡通路を整備し、民間主導による米原駅東口まちづくり事業で、市街地を整備いたします。

4.市民の声で、市民とともに築くまち

4つ目は、「市民の声で、市民とともに築くまち」の提案です。

昨年の平和祈念式典で、戦争の惨禍(さんか)を語り継ぎ、平和の尊さ、戦争の悲惨さを次代に引き継ぐことをお誓いいたしました。

戦後75年が経過し、戦争体験者や被爆者の方々の高齢化が進んでいます。核兵器の廃絶や平和の大切さを伝えるとともに、二度と戦争の惨禍(さんか)を繰り返さない、非核・平和を祈念する「平和の礎(いしずえ)」の建立(こんりゅう)に向けて、市民の皆さんや遺族会の皆さんと連携してまいります。

近年、特別警報が発出(はっしゅつ)される異常気象が日常化し、「気候非常事態」を宣言する自治体が増えています。私たち自治体が、自分ごととして地球温暖化の対策に取り組まなければなりません。

国の2050年の脱炭素社会の実現に向けて、市民の皆さんや団体と連携して、温室効果ガスの排出削減や、自然、環境、生態系、そして命を大切にする市民活動と連携してまいります。

以上、4期目の市政に臨みます私の所信と政策の一端を申し述べさせていただきました。

次に、米原新時代の歩みを着実に進めるため、令和3年度の市政の基本と主要事業について述べさせていただきます。

【令和3年度 市政の基本】

昨年1月、日本国内で初めて新型コロナウイルスへの感染が確認され、ウイルスの感染拡大は、私たちの生活を非日常に変えてしまいました。

あれから1年が経過し、世界の感染者数は1億人を超え、私たちは、いまだにウイルスという存在に翻弄(ほんろう)されています。

今、世界では「グレートリセット」、いわゆる仕切り直しがキーワードになっています。コロナという予期せぬ危機のもと、新たな日常を受け入れ、市民の皆さんとともに、米原市をより良いものに変えていく、仕切り直しが必要です。

昨年、新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、市独自の「市民のくらし緊急対策」では、小規模事業者、個人事業主の皆さんへの事業継続の支援や、子育て世帯、高齢者、障がいのある方々への支援金の支給、インフルエンザの流行抑制対策など、総額 約52億4,200万円、うち、市独自事業として、約7億800万円の予算を計上し、市民の皆さんに直接給付や支援をお届けしてまいりました。

また、7月には、商工会と連携した「米原応援クーポン券」を全戸に配布し、自粛ムードの中で市内飲食店等での消費を促し、事業者や市民の皆さんに喜んでいただいたところです。

しかし、いまだにコロナの感染者数に歯止めがかからず、本市でも50人((注)3月8日現在の市内累計患者数)の感染者が確認されており、誰が感染してもおかしくない状況が続いています。

現在、本市においても、新型コロナウイルスワクチン接種推進室を設置し、4月からの接種開始に向けて、医師等の医療従事者や接種会場の確保、市民の相談体制の構築など、医療関係者と連携しながら、安心・安全なワクチン接種が実施できるよう、懸命に準備を進めているところです。

市民の暮らしと命を守ることが、我々市役所に課せられた最大の使命であり、それらを守り切る備えと覚悟が問われています。

令和3年度の施策構築に当たりましては、市民の命と健康、安全を守ることを最優先に、ポストコロナ社会を見据えた「新たな市民生活への支援」に取り組み、時代やニーズに合致した、米原新時代にふさわしい市政を進めてまいります。

【令和3年度 最重点施策とする取組】

それでは、令和3年度の最重点施策とする2つの取組について、御説明申し上げます。

 

1.米原新時代のスタート、新たなまちの核づくりへの取組

まず、1つ目は、米原新時代のスタート、新たなまちの核づくりへの取組です。

本市は、これまで、首都圏や近畿、東海、北陸の広域都市圏とダイレクトにつながる優位な立地、交通アクセスを十分に活用しきれていませんでした。昨年4月に誕生した観光地域づくり団体「一般社団法人 びわ湖の素 DMO(ディー・エム・オー)」と連携し、統合庁舎の中に、近隣市と連携した広域的な観光案内等の機能を持つ観光案内所を開設します。

また、観光客や旅行者が観光情報やサービスをスムーズに受けられる観光案内所と、米原駅東西自由通路を直結させる連絡通路を整備します。

今、コロナを契機として、地方志向が高まり、テレワーク等の環境が整うことで、従来の働き方、生活の場の自由度が広がる、地方回帰の行動変容が生まれています。都市住民の「通勤を要しない職場」、「在宅で仕事ができる」という意識や行動の変化が、健康志向や、家族、子育て環境の条件選択に、「地方でも、田舎でも」から、「地方こそ、田舎こそ」へという価値観へ変わり、リビングシフトの流れが加速しています。

本市は、滋賀県唯一の新幹線駅・米原駅を中心に、近畿、東海、北陸の交通結節点であり、都市とのアクセス性や時間距離は、格別優位な位置にあります。この優位な立地特性と豊かな自然をはじめとした地域資源を生かし、都市部からのテレワーク移住を促進するテレワーク体験や、空家、空き事務所などを活用したリモートワーク等を促進するための支援メニューを創設いたします。

また、民間事業者との連携や地域おこし協力隊制度を活用した空家対策を進め、米原ならではのライフスタイルや働き方を提案し、関係人口の創出や移住定住の促進につなげます。

柏原地域は、旧中山道の宿場町で、歴史的な街並みや建築物が数多く残されています。地域住民と連携した空家の実態調査や柏原やいと市などを開催するほか、柏原駅前の広場や駐車場の整備を進め、地域の活性化につなげます。

2.ポストコロナ社会を見据えた取組の推進

次に、2つ目は、ポストコロナ社会を見据えた取組の推進です。

市民が暮らす地域も家庭も様変わりしています。人口減少、地域の高齢化に加え、コロナによる人と人とのつながり、結びつきの断絶は、着実に市民の意欲や地域の力を弱めています。人々の孤立化は、弱い立場の人たちを、更に孤立させています。不安やストレスが原因となって、家庭内での虐待や暴力、引きこもりの増加が懸念されています。こうした状況は、個人や家族の問題ではなく、公による支援、支えるシステムが必要です。

複合化、複雑化した課題への支援ニーズには、制度や組織を横断した重層的な支援体制が求められています。

相談者の年代や属性、相談内容に関わらず、包括的に受け止める「断らない相談支援」体制を構築し、部局間の横連携を強化し、相談者に寄り添う支援を行います。

また、本人や家族の状態に合わせて、地域・社会とのつながりづくりや、介護、障がい、高齢者、生活困窮など、困難かつ多岐にわたる課題には、多様な連携や協働による適切な支援へつなげます。

さらに、長期にわたって、引きこもり状態にある人や、自ら支援を求めることが難しい人に対しては、アウトリーチによる支援を行い、本人との信頼関係を構築しながら、つながりをつくる支援を行います。

国が昨年発表した2018年時点の子どもの貧困率は、13.5%と前回調査から大きな改善は見られず、依然として7人に1人が貧困の状態にあります。さらに、コロナによる事業の休業、廃業が続いており、県内でも製造業や飲食業、宿泊業への影響が大きく、経済活動が停滞している状況で、今後、更なる悪化も予測されます。生活費に加え、子育て、教育費が必要な生活困窮の家庭や子どもたちに支援が必要です。

子どもの状態をいち早く把握できる学校現場に、子どもが抱える困り感を把握し、行政サービスや居場所などにつなぐ学校連携マネージャーを配置し、子どもや保護者、家庭全体を支える支援へとつなげます。

ウィズコロナ、アフターコロナを契機に、「新しい生活様式」と加速する社会経済のデジタル化に対応するため、小規模事業者のキャッシュレス決済端末の導入等の取組に対し、支援を行います。

昨年はコロナの影響により、自治会活動の自粛や延期を余儀なくされた自治会も多かったことと思います。自治会活動の再開に向けて、集会施設での感染症対策や子どもの安全な遊び場環境の整備に取り組まれる自治会に対し、引き続き、補助金による支援を行います。

いよいよ、本年5月に米原駅東口に統合庁舎が開庁いたします。統合庁舎の完成を機に、市民の皆さんから、市役所の見た目が変わっただけでなく、職員の意識や仕事への熱量、向き合い方、市民への接し方が新しくなることが期待されています。

これまで以上に市民サービスの向上を図ることはもちろんですが、機動力を発揮できる新しい組織のもと、庁舎が統合された効果を最大限発揮し、その効果を市民の皆さんに還元する、市民に寄り添い、地域とつながる、市民の思いを実現する、地域の願いが叶う米原市役所にすることを、強く決意させていただきます。

それでは、第2次米原市総合計画に掲げる6つの基本目標に沿った取組を着実に推進する、令和3年度の主要事業について、御説明申し上げます。

令和3年度 主要事業

1.健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり(福祉)

まず、1点目「健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり」についてです。

米原小学校区および坂田小学校区では、住宅地開発に伴い、放課後児童クラブを利用する児童数が増えており、特に、米原小学校区では、区域内での大規模な住宅地開発も予定されており、今後、さらに待機児童が増えることから、米原小学校のグラウンド敷地内に新たな施設を整備いたします。

また、小学校から離れた場所で放課後児童クラブを実施している春照小学校区および坂田小学校区では、送迎用の車両を新たに購入し、放課後児童クラブを利用する子どもたちの安全な送迎と見守りを行う支援員の負担を軽減いたします。

女性の就業率上昇により、保育需要の上昇が続き、0歳児から2歳児までの就園率が年々伸びています。特に、住宅開発が進む米原・近江地域では、年少人口の増加とともに、保育需要の増加が予測され、令和3年度には、年度当初から待機児童が発生する見込みです。待機児童の解消と今後の保育需要に備えるため、早急に保育施設の確保を進める必要があることから、市内に進出を予定している民間保育所に対し、施設整備の支援を行います。

次に、地域福祉と高齢者福祉についてです。

本市の人口は減少傾向にあるものの、65歳以上の人口は増加し、特に介護認定のリスクが高まる75才以上の後期高齢者人口の増加により、一人当たりの介護サービス費が県内で最も高い状態が続いています。持続可能な介護保険制度のサービス提供を維持するため、令和3年度から介護保険料の基準額を月額6,790円に引き上げ、市民の皆さんに御負担をお願いしなければならない状況です。

このような状況も踏まえ、平成25年から実施している地域お茶の間創造事業の更なる充実、拡大を図るほか、公民館等で運動や趣味活動を行っている高齢者グループのお茶の間創造事業団体への登録を推進し、高齢者の介護予防や健康づくりへの取組を加速いたします。

地球規模の温暖化は、夏の猛暑をもたらし、毎年、高齢者の方が熱中症によって自宅で亡くなられる悲しいニュースが届いています。特に高齢者にとっては、夏の異常な暑さで急速に体力を奪われてしまいます。夏場の熱中症予防には、水分補給とエアコンの活用が言われていますが、高齢者の方の中には、自宅にエアコンがないという方もおられることから、エアコンを設置されていない75才以上の高齢者非課税世帯を対象に、新規のエアコン設置に対する助成制度を創設いたします。

2.ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり(教育・人権)

次に、2点目「ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり」についてです。

子どもにとって本を読むことは、多様な実体験をする機会が乏しい今の子どもたちにとって、読書体験が創造力や思考力を育み、人生の生きる力につながります。令和3年度を初年度とする第3次米原市子ども読書活動推進計画に基づき、学校図書館の蔵書を充実させるほか、毎月23日を「まいばら読書の日」と設定し、家庭での読書と本を読む習慣づくりを進めます。

また、国の GIGA(ギガ) スクール構想の加速化により、令和2年度に整備しました児童生徒1人1台タブレットや電子黒板などのICT(アイ・シー・ティ)を活用し、子どもたちの主体的・対話的で深い学びにつなげます。

学校施設、教育環境の充実は、学校施設長寿命化計画に基づき、引き続き、双葉中学校の長寿命化事業を進め、坂田小学校の長寿命化にも着手します。また、小学校、中学校の照明設備のLED(エル・イー・ディー)化を進めます。

生涯学習機能を核とした、市民の交流拠点として、新しく生まれ変わる「学びあいステーション」。現在、各施設で進めているコロナ対策を踏まえたトイレの改修をはじめ、照明設備のLED(エル・イー・ディー)化や音響設備の改修を行い、フリースペースの設置、施設利用の運用拡充、情報発信機能の強化などを進め、市民の皆さんが、学びを通してさまざまにつながる場として親しんでいただける施設を目指します。

市内には、多くの貴重な歴史文化遺産が残されています。しかし、少子高齢化、過疎化などを背景に、滅失(めっしつ)や散逸(さんいつ)等の恐れもあり、これらの遺産・文化財を後世に継承していくことが喫緊の課題です。未指定を含めた文化財を保護・保存するとともに、まちづくりや観光振興に活用することを目的に、引き続き「文化財保存活用地域計画」の策定を進めるとともに、国史跡 京極家墓所(きょうごくけ ぼしょ)や、旧常喜医院(きゅう じょうぎいいん)の耐震補強計画の策定を進めます。

本年の東京オリンピック・パラリンピック、2022年の関西ワールドマスターズゲームズ、2025年の国民スポーツ大会。これらビッグイベントのホストタウン、ホッケー競技の開催地として、市民ボランティアの皆さんと一緒になって機運を盛り上げ、ホッケー競技の普及啓発や選手の強化育成などに取り組み、名実ともにホッケーのまちを目指します。

また、市民や利用者の方から要望をいただいていた山東グラウンドのトイレの増設や、広域避難所に指定されている市民体育館の吊り天井の撤去や照明のLED(エル・イー・ディー)化、アリーナのフローリングの改修などを進め、スポーツを身近に楽しめる環境、市民の健康づくりにつなげます。

「私たち米原市民は、人が人として幸せに生きるまちをつくります。」

これは、米原市人権尊重都市宣言の始まりの一文です。市では、宣言に掲げるまちを目指し、さまざまな人権施策に取り組んできました。しかし、同和問題をはじめとする人権問題が依然として存在し、特に、情報化の進展に伴うインターネットによる人権侵害は、悪質で深刻化しています。インターネットでの差別書き込み等に対し、モニタリング調査を行い、早期発見、拡散防止を図ります。

3.水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり(環境・防災)

次に、3点目の「水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり」についてです。

昨年は、台風の本土上陸がない一年でありました。しかし、近年は、全国各地で大規模自然災害による甚大な被害が相次ぎ、気候変動の影響は、災害の頻発化・激甚化を招いています。先月発生した福島と宮城で震度6強を観測した地震では、10年前に発生した東日本大震災の余震と言われており、まさに、「いつ起こるともわからない」大規模自然災害に備え、市民の命と財産を守る防災・減災の推進は、喫緊の課題です。

各地域の消防団の機動力を強化するため、消防車両や資機材の整備充実を図るほか、特に、平日昼間の消防力を確保するため、防災士や地域防災リーダーの育成を進めます。また、消防・防災に精通した人材として、新たに防災マネージャーを市役所内に配置し、地域の防災力の更なる強化を進めます。

災害警戒、発災後の応急対応等に必要な情報収集を迅速かつ安全に行うため、新たにドローンを導入し、災害時の対応力の強化を進めます。さらに、コロナ禍における避難所の環境改善、機能強化を図るため、支援を必要とされる方用のベッドの増強や、停電対策として、蓄電池機能を備える電気自動車や携帯電話用の充電器を配備します。

災害時、確実に水を供給できる基盤を確保するため、広域避難所への重要管路である配水管の耐震化事業を優先して進めるほか、磯浄水場の耐震補強工事を進めます。

下水道施設については、施設の長寿命化を図るため、管路調査やマンホールポンプ等の更新を行うほか、総合地震対策として、主要管路の耐震化工事や、広域避難所にマンホールトイレの設置を進めます。

災害情報は、市民の皆さんが、事前の避難準備や避難行動を起こすための重要な情報となります。市民の皆さんに、より身近な地域の災害情報を確実に届けるため、防災情報伝達システムによる放送のほか、行政放送である伊吹山テレビを活用した災害・気象情報を発信できる仕組みを構築します。

本市の長岡のゲンジボタルとその発生地は、日本で唯一の特別天然記念物に指定され、市民の皆さんによって、大切に守られてきました。今年の1月には、県道長岡バイパス工事予定地にて、子どもたちや地元住民の皆さんが、ホタルの幼虫を移動する保全活動が行われたところです。日本一のホタルの里を目指す全国6つの自治体が集まる「ほたるサミット」が、令和4年度に本市で開催されることから、サミットの成功に向けて、市民による実行委員会を立ち上げ、準備を進めるとともに、地球の環境問題や気候変動などへの問題意識が醸成される啓発、環境教育を進めます。

4.地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり(産業経済)

次に、4点目の「地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり」についてです。

市内の山村部では、高齢化が進み、山や森へ入る人が少なくなっており、不十分な管理が、山の崩壊や大雨等による大規模な土砂災害等を引き起こす要因となっています。また、災害時の森林境界を確認する立会の負担も大きく、境界確定にも膨大な時間を要しています。この課題を解決するため、ドローン等を活用した森林情報や境界立ち合いを効率化し、災害時等の迅速な復旧作業の着手につなげます。

中山間地域の自治会では、野生鳥獣による農作物や生活環境への被害に苦慮されています。また、住民の高齢化、担い手不足などにより、侵入防止柵の維持・補強をすることが困難な自治会も多くなっています。

地域の実態や獣害被害に対し、侵入防止柵の設置支援の継続、自然災害により破損した柵の復旧支援を行います。特に、サルの被害が大きい地域では、ICTを活用した大型サル檻の設置や、モデル集落での被害発生の原因究明を進め、より効果が発揮できる対策を検討します。

5.心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり(都市基盤)

次に、5点目の「心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり」についてです。

乗り合いタクシーまいちゃん号は、市民の皆さんの交通手段として、市内全域での運行と市外の病院や商業施設への移動利用の促進など、利便性の向上に努めてきました。しかし、高齢化や免許返納の進展、タクシー運転手の人材不足、運送費の上昇など、公共交通を取り巻く社会情勢も大きく変わってきています。今後も増大する需要への対応や、サービス水準の維持、利用者の増加に伴う財政負担の増大に対応するため、市民の皆さんが利用しやすい、インターネットによる予約配車システムを導入し、市民の利便性の向上と乗り合い率を向上させ、効率的な運行を図ります。

近江長岡駅のエレベーターの設置については、鉄道事業者との協議を進めながら調査設計を実施し、令和4年度以降の早い段階で工事に着手できるよう取り組みます。

将来のまちづくりに必要な道路や利用者が安心・安全に通行できる道路環境を整備するため、キッズゾーンを含む通学路等の安全対策を進めるほか、道路網整備計画2019に基づき、市道板戸市場線、顔戸八田羽織(ごうど はった はおり)線などの道路改良を進めます。

また、災害対策および施設の安全を図るため、橋梁の長寿命化計画に基づき、昭和橋の架け替え工事や新庄橋などの修繕工事を進めます。

近江地域では、住宅地開発等により、若年世帯を中心に人口が増加し、坂田駅を利用する市民も増えていることから、駅前の一時停車スペースの拡張など、駅前ロータリーの改修を行い、駅利用者の安全と利便性の向上を図ります。

市民意識調査や各種アンケートでは、子どもが安心して遊べる公園がない等、市民が公園に満足していない結果が出ています。これらの声に応え、計画的に公園、緑地の整備を進めるため、市民とともに創る都市公園市民会議で議論を進めてきました。

これまでの市民の声や専門家の視点も踏まえ、新たな市民公園の構想づくりに取り組むほか、緑の基本計画に位置付けている磯公園の整備に着手します。

6.まちづくりを進めるための基盤(都市経営)

次に、6点目の「まちづくりを進めるための基盤」についてです。

私たちは、小さな変化にも対応できる市役所として、市民の皆さんや地域に対して、一歩を踏み出すことで、市民に寄り添ってまいりました。統合庁舎では、職員が一堂に集い、仕事をするステージが整います。これは、ただ働く場所が新しく変わったということではなく、市民の皆さんから、市役所の仕事のあり方、地域への向き合い方が良い意味で変わったと言われる変化を、自ら作っていく大事な時期でもあり、公共のサービスがどのように変わるのか、その真価が問われる年になると思っています。

山東・伊吹地域は、市内でも高齢化が進んでいる地域であり、また、人口規模や地理的な要因を考慮すると、適切な行政サービスの確保や災害時の迅速な対応、安全で安心な暮らしを支える組織体制が必要です。現在の山東庁舎については、山東支所として市民の総合窓口や地域課題への対応、地域特性に配慮した事務機能を配置するほか、空スペースの有効利用を進めます。

また、近江地域、伊吹地域には、総合窓口機能や自治会との連絡調整機能を有する市民自治センターを配置します。

本市の地域力に欠かすことができない自治会の役割は大変大きく、日頃から、自治会活動のほか、地域の見守りや災害時に備えた訓練など、市からのさまざまな依頼に対して、御協力を賜っております。市政を預からせていただいている立場として、自治会の皆さまには、大変感謝しているところでございます。

しかし、近年は、働きながら自治会長を引き受けていただいている方も多く、申請手続きや書類の提出などの負担も大きいことから、市の公式ウェブサイトに自治会向けのページを設け、申請書類やお知らせなどを一元化し、自治会長や役員の方が市役所まで来ていただく負担を軽減いたします。また、インターネット上で取得できるものや、押印の見直しにより、メールでの提出を可能とするなどの事務の効率化を進め、その効果を職員が自治会と対面でやるべき対応に還元できるよう取り組みます。

地域での少子高齢化が進み、それに伴う新たな地域課題が増えている中、市役所と両輪となる地域力を発揮できる自治会活動の推進につなげるため、避難支援の体制づくりや自治会役員の女性登用、空家への移住者受け入れに取り組んでいただく取組に対し、交付金による支援のほか、引き続き、地域担当職員を派遣し、更なる地域力の向上につなげます。

市役所業務の電子申請の普及に向けて、市民のライフイベントに応じた手続き案内や申請のオンライン化を進め、市民の利便性、満足度の向上と、行政事務の効率化を図ります。また、電子申請の個人認証にはマイナンバーカードを用いることから、市民の皆さんへマイナンバーカードの使用用途などをお知らせしながら、カードの更なる普及を図ります。

【米原新時代に向けた市役所改革の推進】

最後に、米原新時代に向けた市役所改革の推進です。

一昨年の12月、本市の元職員が起こした殺人未遂事件については、議会の皆さまにも御報告させていただいたところです。この事件では、生活保護の受給に対し、過度の要求が繰り返され、精神的に追い詰められたとして、相当程度の同情の余地があることが指摘されました。これを受け、市としましては、これまでの生活保護業務や体制など、事件が起きた背景を検証するため、第三者による検証委員会を立ち上げ、不祥事の再発防止と今後の適正な事務執行に取り組んでまいります。

本日、令和3年度 一般会計当初予算案を提案させていただきました。感染症の影響等による市税の減収を見込むほか、地方交付税についても令和3年度から普通交付税が一本算定となることによる歳入減を見込んでいるところであります。こうした中、学校施設や道路橋りょう等の長寿命化事業の実施に加え、公債費の増加などにより、予算規模は大きく、経常収支比率や実質公債費比率の上昇が見込まれ、財政構造の硬直化が予見できる状況にあります。

さらに、子育て支援や定住促進などの人口減少対策、ポストコロナ時代を見据え、新たな市民生活の確立に向けた対応も必要であり、未来に向けた投資やさまざまな行政需要に適切に対応していくため、これまで以上に、行政資源配分の最適化、事務の効率化・合理化などに取り組み、米原新時代に向けた新しい仕事の仕方や市民への向き合い方を確立し、持続可能な財政基盤の構築に向けて歩む必要があります。

コロナ禍を経験し、かつ庁舎が統合する令和3年度は、先ほど申し上げた「仕切り直し」で、これまでの考え方を一新し、思い切った変革と新しいチャレンジに踏み込むチャンスであると考えています。事業や施設の見直し、廃止は、もはや「待ったなし」の現状です。社会のニーズや将来を俯瞰(ふかん)した適切な事業の創設など、市民の皆さんには、時には厳しく映るかもしれませんが、この機会を逃すことなく、改革を実行に移さなければなりません。

令和3年度では、第4次行財政改革大綱を基本に、外部の行政経営専門家による多角的な視点での検証、助言等を受けながら、事業の見直しや補助金の適正な在り方等の議論を行い、令和4年度に向けた方向性を定めます。

また、現行の公共施設再編計画の検証とともに、統合庁舎や認定こども園の整備など、現在の施設状況に応じた公共施設再編計画と公共施設等総合管理計画の見直しを進め、施設の有効活用と最適化に取り組みます。

コロナ禍でのリスクの分散、職員の働き方改革を進めるため、テレワーク環境を整備し、時間や場所の有効活用を進めるほか、自治体専用のコミュニケーションアプリを導入し、セキュリティを確保しながら、リアルタイムでの情報共有、意思決定のスピードアップにつなげます。

以上、今定例会に提案させていただきました令和3年度における市政の基本と、主要事業について申し上げました。

【結びに】

 

平成の合併によって誕生した米原市も16年が経過しました。この16年間は、米原市の地固めの期間として、紆余曲折もしながら、市としての一体感を醸成させてまいりました。

新型コロナウイルスによる世界的危機の中で、今、日本は大きな変革期を迎えており、本市も統合庁舎および山東支所の開庁とともに、米原新時代を迎えます。

令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の対応を最優先にしながら、コロナ禍において、地方に注目が集まっている今こそ、米原市の強みである優位な立地条件、交通アクセスの良さを最大限活用し、滋賀県の東の玄関口にふさわしいまちづくり、米原新時代を市民の皆さんとともに築き、「ともにつながり ともにつくる 住みよさ実感 米原市」の実現に向けて、市民の皆さんに「ワクワク感」を感じていただけるまちづくりを進めてまいります。

米原新時代の始まりに当たり、市議会議員の皆さまをはじめ、市民の皆さまに格段の御理解、御協力をお願い申し上げ、令和3年度の施政方針とさせていただきます。

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