施政方針(令和2年第1回米原市議会定例会)

更新日:2020年02月28日

令和2年度 米原市施政方針

令和2年 米原市議会 第1回定例会の開催に当たりまして、令和2年度の市政運営の基本的な考え方と主要事業について述べさせていただきます。

【令和元年度の振り返りを通して】

昨年は、平成から令和という新しい時代に変わる、日本の歴史において一つの区切りとなる年となりました。

今、振り返りますと、30年あまりの平成は、近現代では初めて戦争の経験がない平和な時代であった一方で、2つの大きな震災をはじめとして、多くの自然災害に見舞われた試練の時代でもありました。

特に近年は、地球温暖化の影響と思われる記録的な大雨や暴風など、地球規模での異常気象が続いています。昨年の台風19号では、河川の氾濫や決壊が相次ぎ、東日本を中心に浸水や土砂災害による甚大な被害がもたらされました。

幸い、本市では大雨や台風による大きな影響はありませんでしたが、ひとたび大型台風が本市を縦断すれば、同様の被害が想定され、一昨年、竜巻による大きな被害を経験している私たちにとって、決してひとごとではありません。

今後も激甚化する大規模自然災害に対応するため、昨年から進めている地域で取り組む個別計画に基づく避難支援体制づくりや、市の防災体制の強化など、過去の災害を教訓として、地域と行政が一体となった災害対応力の強化を確実に進めなければなりません。

昨年、市内において、老老介護による精神的な負担からと思われる高齢者による悲しい事件が発生しました。

福祉関係者の訪問や家族との協議がありながら、介護者の抱える孤独や孤立に寄り添えなかったことが悔やまれてなりません。

市では、地域での支えあいの場、高齢者の通いの場をつくる「地域お茶の間創造事業」を展開していますが、心身ともに追い詰められた高齢者世帯に対する身近な支え方や、行き場のない当事者の心に向き合える専門的な支援などの必要性をあらためて感じているところです。

昨年は、米原駅東口において、念願であった統合庁舎の建設工事に着手したほか、民間開発による米原駅東口周辺まちづくり事業の基本設計が公表されました。

これらの事業を連動させ、一体的に取り組むことにより、近畿、北陸、中部をつなぐ広域交通の結節点「米原」の立地特性を最大限に生かし、滋賀の玄関口にふさわしい賑わいの創出につなげてまいります。

そして、今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。前回のオリンピックに引き続き、市内からオリンピアンの輩出が期待されるほか、ニュージーランド国のホストタウンとして、男子ホッケーチームの事前合宿を受け入れることになりました。世界中の人々に夢や感動を与えるオリンピック・パラリンピックを契機として、ホッケーのまちとしての誇りやレガシーの再認識につなげられるよう、市民の皆さんと一緒に機運を盛り上げてまいります。

さて、いよいよ、令和2年度、2020年度が始まります。

国勢調査開始以降、初めて人口が減少し、人口減少社会に突入した日本。戦後まもない時代、毎年約270万人が生まれたいわゆる団塊の世代、それから約70年後の2019年の出生数は、この世代の3分の1にも満たない90万人を割ると言われています。

現在は、現役世代2人が高齢者1人を支えていますが、今の子どもたちが働き手となる25年後には、1.4人で1人を支えることになります。

その一方で、日本の人口の半分以上を大都市が占め、特に東京への一極集中が顕著となり、その反動で地方の人口減少、過疎化が急激に進んでいます。

こうした状況が家族や地域のあり方を大きく変化させ、地域自治の弱体化につながり、今まで安心、安全だと思われていたことが通用しない時代になりつつあります。

私たちは時代とともに生きています。だからこそ、常に、敏感に、社会情勢や技術の変化に適応しながら、新しいモノサシで物事を見たり、行動することを考えていかなければなりません。

まさに、社会の変化を肌で感じながら、時代の流れ、時代感と言いますか、時代をつかむ感覚を研ぎ澄ませ、そのつかんだ感覚を未来にどう生かしていくのかが問われていると思います。だからこそ、令和という新しい時代を迎えた今、市民の皆さんと一緒に、米原市の新しい時代を築いてまいります。

【令和2年度施策構築に当たって】

令和2年度の施策構築に当たりましては、社会状況や市民ニーズを的確に捉えながら、第2次米原市総合計画に掲げる6つの基本目標に沿った取組を着実に推進するとともに、米原新時代を迎えるために、4つの重点取組事項として施策を進めていきたいと考えております。

それでは、令和2年度における主要事業について、重点取組事項から御説明申し上げます。

【重点取組事項】

まず、1つ目の「米原新時代に向けた取組の加速」についてです。

米原新時代をスタートさせる、その象徴の1つである統合庁舎の建設が昨年から本格的に始まっており、令和3年春の開庁に向けて着実に整備を進めてまいります。また、統合庁舎の整備にあわせて、既存庁舎の跡地活用や、山東庁舎を山東・伊吹地域を補完する総合支所とするための準備を進めてまいります。

これまで、滋賀県唯一の新幹線駅で、滋賀の玄関口、近畿、北陸、中部をつなぐ広域交通の結節点としてのポテンシャルを十分に生かしきれていないことが本市の大きな課題でした。

米原駅東口を滋賀県の玄関口にふさわしい、賑わいのある駅前とするため、駅前に立地される市役所内のコンベンションホールや市民交流スペースと米原駅を結ぶ連絡通路を整備し、民間開発事業である東口まちづくり事業と連動させた新たなまちの核づくりを進めます。

特に、東口まちづくり事業につきましては、滋賀県との連携を強化し、事業者への土地の賃貸借契約に向けた手続きを進め、令和3年度のまちびらきを目指してまいります。

また、昨年は、観光による新たなまちづくりを目指し、従来の観光協会を発展的に解散することが決定されました。民間の持つ機動力や柔軟性、専門性を生かし、地域の多様な関係者と連携しながら、交流人口の増加、地域の稼ぐ力を引き出し、観光によるまちづくりを目指す新たな団体の設立を支援いたします。そして、新たな組織体制が、官民の役割分担と協働の関係を構築し、米原市のほか、彦根市や長浜市も含めた広域観光、広域交流を担う主体となっていただくことを期待しているところです。

次に、2つ目「未来を創る子どもたちを守る取組」についてです。

SDGs。最近よく耳にする言葉ですが、これは持続可能な開発目標として、2015年9月の国連サミットで採択された17の開発目標により、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、経済・社会・環境をめぐる課題に取り組むものです。その目標の1つに貧困をなくそうという目標がございます。国の調査では、7人に1人の子どもが相対的な貧困状態と言われています。これはOECD加盟国(経済開発協力機構)の中でも高い貧困率です。

市では、国に先駆けて保育料の軽減を実施したほか、認定こども園の整備や給付型奨学金制度の創設、中学生までの医療費等の無料化、小学校3年生を対象とした「学びっ子」などをはじめとする教育環境を充実するなど、「滋賀県一子育てしやすいまち」を目指して取組を進め、その成果は、市民意識調査の結果にも表れております。しかしながら、全国的には、虐待による痛ましい事件が後を絶たず、子どもを取り巻く環境は厳しい現状にあります。また、現場の感覚としては、子どもの貧困状態は見えにくく、実態を十分に把握できていないことから、子どもや家庭への支援が行き届いていないのが現状です。

そこで、貧困や生活困窮の状態にある子どもや家庭が抱える課題に対し、まずは子どもや家庭が置かれている実態を調査いたします。そして、その結果を分析し、学習や生活、経済的支援のほか、地域でのネットワーク、相談体制を充実させ、生きづらさを感じている子どもや家庭への支援につなげてまいります。

また、特に生活困窮の状態にある家庭に対しては、市役所の横連携や関係者等と一緒になり、基本的な生活習慣の習得や学習に対する支援等を行い、子どもの生活向上および保護者への養育力の向上につなげてまいります。

さらに、子どもをはじめ、引きこもりやニート、社会的弱者や社会的少数者と言われる何らかの事情で生きづらさを感じている若者たちが、心地よく暮らせるよう、若者自立ルーム「あおぞら」の相談体制を週4日から週5日に拡大し、来所による相談対応のほか、相談に来づらい人には、別の相談場所を確保しながら、社会的自立につなげてまいります。

そして、市役所組織の横連携をさらに強化して、米原市という規模だからこそできる機動性を発揮しながら、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、市全体で取り組んでまいります。

昨年、大津市で起きた保育園児の死傷事故を受けて、市においても子どもが日常的に集団で行動する道路などの緊急安全点検を実施いたしました。この点検結果を受け、道路管理者や警察などとも協議を行い、市内全ての保育園、幼稚園、認定こども園の園児が移動する経路を「キッズゾーン」として整備し、子どもたちが安心して集団行動ができるよう安全を確保してまいります。

次に、3つ目の「つながりでつくる安全安心な暮らし」についてです。

近年多発する災害に対応できるよう、地域ぐるみの防災体制を維持・継承することは重要な課題です。特に、激甚化する豪雨災害等に対応するためには、想定を超える事態への備えが求められております。これまでの災害を教訓とし、地域と行政が一体となって災害対応力を強化していかなければなりません。

平成30年6月に発生した竜巻の被害を受け、大規模な自然災害に対しては、地域で支えあう強い「地域力」を実感し、あらためてその重要性を感じたところです。そこで、地域の災害対応力を強化するため、防災資機材等の購入補助率の引上げや資機材の品目を追加するほか、引き続き、支援が必要な方の個別避難支援の体制づくりや、地域防災リーダーとなる防災士資格の取得支援など、地域の防災力の充実強化を図ってまいります。

あわせて、想定を超えた災害に対応できる市の防災体制を強化するため、地域防災計画の改訂や業務継続計画、災害時に応援を受け入れる、いわゆる受援計画を令和2年度、3年度の2か年をかけて策定するほか、総合防災マップを更新いたします。

また、避難所での高齢者や女性、子ども、障がいのある方等に配慮するため、プライベートな空間を確保できるワンタッチテントや簡易ベッド、液体ミルク等を新たに配備し、避難所の環境改善と機能強化を進めます。これらの取組により、地域の力で地域を守る防災力と市の防災体制を強化し、市全域で災害対応力が発揮できる仕組みづくりを進めてまいります。

さらに、人と人、地域とのつながりがあり、支え合えるまちであることは、米原市の財産であり、これを受け継いでいかなければなりません。

地域に寄り添い、ともにまちづくりを進めるため、昨年創設しました自治会パートナーシップ事業により、さきほど申し上げました避難支援体制づくりの推進や、自治会における女性役員の参画、空家への移住者の受入れについて、地域担当職員制度も活用しながら、地域力の向上に向けた自治会の積極的な取組を支援してまいります。

最後に、4つ目の「人生100年時代の健康づくり」についてです。

日本人の平均寿命は、男性で81.25歳、女性で87.32歳と世界トップクラスです。平均寿命の延伸に伴い、健康寿命を延ばすことの重要性が社会保障やライフスタイルの観点から高まってきており、市民一人一人が主体的に健康づくりに取り組めるよう、健康に関する意識を高める必要があります。

そこで、子どもや高齢者の方などが各ライフステージにおいて、スポーツを通じた健康保持・増進を図り、米原市ならではの健康づくりに取り組む機運をつくるために、健康トレーナーを中心とした運動による健康づくりを進めてまいります。

また、健康推進員の皆さんとともに、食育等の健康教育や健康診断の受診勧奨を行い、市民の健康意識の高揚および健康寿命の延伸につなげてまいります。

また、今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、市民のスポーツに対する興味関心が大いに高まることが予想されます。市では、ニュージーランド国のホストタウンとして、男子ホッケー代表チームの事前合宿の受入れや交流事業を行うほか、米原出身選手を応援するパブリックビューイング会場を設け、大会の臨場感を市民の皆さんと一緒に共有することにより、スポーツの力による「人づくり」、「健康づくり」、「コミュニティづくり」を進めてまいります。

それでは、引き続きまして、次年度の主な取組について、総合計画の基本目標に沿って申し上げます。

【主要事業】

1.健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり(福祉)

まず、1点目「健やかで安心して暮らせる支え合いのまちづくり」についてです。

子ども・子育て支援の分野では、子どもの健やかな育ちと子育てを社会全体で支援する環境を整備するため、令和2年度からの第2期子ども・子育て支援事業計画では、新たに、保育人材の確保に取り組むこととしております。今年度から導入しましたICTの活用等を進め、保育人材が働きやすい環境を整備し、保育士の離職防止等につなげてまいります。

また、放課後児童クラブにつきましては、米原小学校区の児童増加に伴い、受入施設が不足することから、新たな施設を建設するための設計を行います。

さらに、住宅開発が進む米原地域においては、保育需要の上昇傾向が続き、年々、園への入所調整は困難となっており、年度途中では待機児童も発生しています。

こうした状況から、低年齢児の受入れに対応するため、まいばら認定こども園の分園として、ほかの公共施設を活用できないか検討を始めるとともに、設計に着手いたします。

子育て世帯への経済的な負担軽減につなげるため、国民健康保険税の子どもに係る均等割負担につきましては、市の国民健康保険運営協議会での検討や県との議論を始めたいと考えております。

次に、高齢者福祉と地域福祉についてです。

日本では、これまで世界的にも経験したことがない、人口減少や超高齢社会に突入しています。人口構造や社会環境の変化により、家族や社会のあり方もこれまでとは大きく変わり、老老介護や多重介護、育児と親族の介護を同時に行うダブルケアなど、新たな課題が顕在化しています。

創設から20年が経過した介護保険制度は、超高齢社会になくてはならない制度となりましたが、介護を理由に仕事を辞める人が年間10万人を超え、また、介護職員の人材不足も深刻な状況です。

あわせて、高齢化の進行に伴い、介護給付費とそれを負担する保険料は右肩上がりで伸びており、近い将来、国民の3人に1人が高齢者、5人に1人が後期高齢者となり、高齢者の生活を支える介護などの費用を賄うための現役世代の負担は大きくなってきます。

これからも、介護保険制度を持続可能な制度として維持するためには、高齢者の社会参加や生きがいづくり、要介護状態に至らない元気な高齢者が活躍できる仕組みが必要です。

市では、平成25年から「地域お茶の間創造事業」をスタートし、身近な地域における住民主体の居場所づくりを進めています。居場所づくり、支え合い活動を実施していただく団体には、引き続き支援を行うとともに、一人暮らし高齢者が多い地域などを重点地域とし、集中的に通いの場づくり等の働きかけを行い、地域の居場所づくりを広げてまいります。

また、第7期介護保険事業計画に基づき、要介護度が高く、医療ニーズの高い要介護者に対応するため、宿泊・訪問看護等の複合型サービスを提供できる地域密着型の「看護小規模多機能型居宅介護事業所」の整備を進め、介護が必要になっても安心して地域に住み続けられる環境をつくってまいります。

次に、障がい者福祉の推進です。

障がいのある人が生きづらいと感じるハード、ソフト両面の壁を取り除き、障がいのある人が自らの能力を最大限発揮し、自己実現できる社会こそが障がいのあるなしに関わらず、誰もが分け隔てなく、ともに支え合い、ともに暮らせる社会につながります。

本市においても、医療ケアを必要とする重度の障がいのある人とその家族が安心して生活を送ることができるよう、重症心身障がい児・者に寄り添った地域支援体制を整えるため、緊急時の受入れや、一時的な入所等に対応できる医療ケア対応型の施設整備に向けて、近隣の自治体や民間事業者と連携しながら進めてまいります。

また、「手と手をつなぐ米原市手話言語条例」の理念に基づき、手話に対する理解の促進および手話を使用しやすい環境をつくるため、市役所の専任手話通訳者を2人体制とし、手話による相談、生活援助等への対応や、聴覚障がい者等に対する理解を深める啓発活動等を充実してまいります。

2.ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり(教育・人権)

次に、2点目「ともに学び輝き合う人と文化を育むまちづくり」についてです。

まずは、学校教育の充実についてです。

子どもたちが日常的に文字や活字に触れるようにするため、学校図書館の運営に必要な専門的な知識を持つ学校司書につきまして、市内全ての小中学校への配置を完了させ、子どもの読書活動や探究的な学習などを行うことで、学力の向上につなげてまいります。

また、小学校3年生を対象とした学力補充教室「学びっ子」を継続して実施し、基礎学力の確かな定着を目指します。さらに、生活困窮世帯の子どもの生活支援や学習習慣の定着支援を行います。

私たちは、未来を担う子どもたちの豊かな成長と10年、20年後の地域社会の担い手となる心豊かでたくましい米原っ子を育てていかなければなりません。そのため、学校と地域が力を合わせ、社会全体で子どもを育てるコミュニティスクール事業につきまして、市内全ての小中学校に拡充し、地域とともにある学校づくりを進めてまいります。

続いて、教育環境の充実につきましては、学校施設長寿命化計画に基づき、計画的に改修整備を進めているところであり、双葉中学校の長寿命化は、4年計画の2年目として、引き続き、改良工事を進めてまいります。また、小中学校の体育館照明のLED化につきましても計画的に進めてまいります。

さらに、学校のICT環境整備につきましては、普通教室の電子黒板の整備や、河南中学校および米原中学校のパソコンを更新し、子どもたちの学びの質を高めるための環境を整備いたします。

本市には、国指定の文化財のほか、未指定の文化財も含めた魅力のある文化財が数多く残っています。

これらの文化財を後世に継承するため、文化財の保護・保存とあわせ、まちづくりや観光振興に活用することを目的とした「文化財保存活用地域計画」を令和2年度から3か年かけて策定いたします。 また、国史跡京極家墓所や国の登録有形文化財に登録されました旧常喜医院など、個々の文化財の保護活用計画についても策定を進めてまいります。

先ほど申し上げましたSDGsでは、「誰一人取り残さない」という人権の理念が掲げられております。

本市においても人権尊重のまちづくりを目指し、人権擁護委員の皆さんや関係機関と連携しながら、人権意識の高揚と人権問題に対する正しい認識と理解を深め、誰一人取り残さない取組を進めてまいります。

3.水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり(環境・防災)

次に、3点目の「水清く緑あふれる自然と共生する安全なまちづくり」についてです。

日本は、国土の地理的および地形的な特性などにより、数多くの災害に繰り返し見舞われ、そのたびに多くの人命を失い、また、経済的・社会的な損失を被り続けてきました。そして、その都度、長い時間をかけて復旧、復興対策を講じてきました。

こうした過去の経験から得た教訓を踏まえ、大規模な自然災害に対する備えについて、予断を持たずに最悪の事態を念頭に、事前防災・減災と迅速な復旧復興ができる施策を総合的かつ計画的に進め、「強さ」と「しなやかさ」を持った強靱な地域をつくっていくことが必要です。

本市においても、「米原市国土強靱化地域計画」を策定するとともに、強靱な地域をつくるため、米原地区をはじめとする土砂災害の危険性が高い急傾斜地におきまして、被害を未然に防止する急傾斜地崩壊防止対策を実施いたします。

また、山地災害を未然に防止するため、枝折地区において治山工事に着手します。

さらに、林道のほかに多目的に利用されている伊吹山麓道路の1合目から3合目までの改良工事を進め、利用者の安全を確保し、自然に親しめる環境をつくってまいります。

平成30年度から、市民の皆さんとともに、公園の整備について議論をしてまいりました。昨年実施した市民意識調査では、どのような公園があればよいかお聞きしたところ、子どもが安心して遊べる公園や災害時の拠点となる防災機能を持つ公園を望まれている方が多いことがわかりました。市では、こうした市民の声に応えるために、新たな市のシンボルとなる市民公園を目指し、引き続き市民の皆さんと議論しながら、新たな市民公園の基本構想の策定を進めてまいります。

4.地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり(産業経済)

次に、4点目の「地域の魅力と地の利を生かした活力創出のまちづくり」についてです。

伊吹山麓で古くから栽培されてきた在来種「伊吹そば」が、昨年9月に国の地理的表示、いわゆるGIの保護制度に登録されました。全国では89産品、県内では近江牛についで2例目の登録となります。これを受け、市では、守るべき種子を安定的に確保することと、生産面積の拡大を図るため、生産者が行う種子の確保や生産、購入に要する経費に対し、支援する仕組みを創設いたします。

また、種子の確保とあわせて、伊吹そばのブランド価値と認知度を高めるため、東京の「ここ滋賀」にて出張レストランを開設し、伊吹そばの魅力を首都圏の皆さんにアピールしてまいります。

市と商工会が連携しながら進めてきた創業支援事業について、新たな制度としてリニューアルいたします。専門家による評価を行い、創業の可能性を高めるとともに、クラウドファンディングやふるさと納税を活用しながら資金獲得のサポートを行い、創業者のチャレンジ意欲の向上と自立的な経営を促し、地域資源や先進的なアイデアの事業創出につなげてまいります。

林業分野につきましては、自伐型林業の担い手として、東草野地域を中心に里山の保全管理や道づくり、木材資源の利活用などに取り組んでいただいた3人のみらいつくり隊員。この3月で任期が終わり、いよいよ本格的に自伐型林業に取り組んでいただくことになります。一方、林業だけで生活することは厳しい現実もあることから、木材などを生かした新たな起業に対する支援を行い、これからも米原市に住み続けていただけるよう支援してまいります。

野生鳥獣による農作物被害は、集落ぐるみでの防除対策により一定の効果が生まれておりますが、引き続き、防除、捕獲、森林整備の3つの対策を進めるとともに、新たな生活被害等の実態も把握しながら、被害削減に向けた効果的な施策につなげてまいります。

次に、農業振興についてです。

農地集積の促進、農業の生産性の向上や農業経営の安定化につなげる「ほ場整備事業」について、井之口地先での事業継続のほか、新たに野一色地先での事業実施に向けて取り組んでまいります。

5.心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり(都市基盤)

次に、5点目の「心地よく暮らせるにぎわいと交流を支えるまちづくり」についてです。

市内の均衡ある発展と一体性のあるまちづくりを促進し、道路の利用者が安心・安全に通行できる道づくりを目指し、道路網整備計画に基づいた整備を進めてまいります。主な整備箇所としては、市道板戸市場線をはじめとする改良工事に着手するほか、駅を利用する皆さんの安全を確保するため、坂田駅前の広場整備および防犯を兼ねた道路照明灯の設置を進めてまいります。

人口減少対策の一つとして始めました住宅地開発促進事業につきましては、引き続き、開発事業者に積極的な情報提供を行うことにより、新たな宅地開発につなげ、若者や子育て世代の移住、定住などの受け皿となるように取り組んでまいります。

さらに、都市拠点としての機能強化が求められている米原駅や坂田駅周辺は、住宅地として市民や関係者からのニーズが高いことから、本市の土地利用行政の指針となる国土利用計画の策定に着手いたします。これにより、都市計画区域の見直しに向けた市の強い姿勢を打ち出し、積極的に関係機関へ働きかけを行ってまいります。

続きまして、公共交通についてです。

地域に必要な公共交通手段は、将来にわたり、維持・確保していかなければなりません。伊吹北部地域については、路線バスが唯一の交通手段でありましたが、使い勝手が悪いとのお声もいただいております。そこで、伊吹北部の利用者の皆さんの利便性と効率性を高めるため、本年10月から、路線バスに代わって、まいちゃん号の運行区域を拡大するとともに、ワゴン車で運行する「まいちゃんバス」の定時運行をスタートいたします。

また、乗合タクシーまいちゃん号の乗合利用を促進し、効率的な運行を図るため、事前に乗り合いの予約をした場合に利用できる半額乗車券を導入いたします。利用者負担の軽減と事業者の車両不足の解消につながるだけでなく、市の財政負担の軽減にも効果があるものと考えております。

市内には5つのJR鉄道駅がありますが、いずれの駅も通勤通学に利用される市民や観光で訪れる方にとって重要な交通拠点となっております。しかし、米原駅以外はエレベーター等がなく、高齢者や障がいのある方等にとって利用しやすい環境とは言えないことから、まず、近江長岡駅のバリアフリー化の推進に向けて、鉄道事業者と協議を進め、早期に着手できるよう取り組んでまいります。

空家対策については、空家の総合相談窓口である空家バンクでの移住希望者との空家、空地のマッチングや、空家バンクへの登録を促進し、空家を活用した移住定住をさらに推進してまいります。

また、令和元年度に実施した空家等実態調査の結果をもとに、空家所有者に対し、空家バンクへの登録を働きかけるほか、調査で判明した空家について、自治会長や空家バンクサポーターの方々と情報を共有し、空家の活用を促進する取組を進めてまいります。

6.まちづくりを進めるための基盤(都市経営)

最後に、6点目の「まちづくりを進めるための基盤」についてです。

シティセールスについては、東京オリンピック・パラリンピックの開催にあわせて、京都駅で訪日外国人をターゲットにした自然観光体験を中心にしたプロモーションを行うほか、東京の「ここ滋賀」を利用し、伊吹そばやふるさと納税などのプロモーションを行います。

また、東京オリンピック・パラリンピックのほか、滋賀県ゆかりの大河ドラマの放映により、滋賀を訪れる人も増えることが予想されることから、米原駅東西自由通路において、オリンピック関連では「ホッケー」をテーマに、大河ドラマでは「戦国」をテーマに企画展を行い、本市の魅力を市外の方々に伝えていくほか、市民の皆さんが米原を自慢できる、誇れるような企画展示にしてまいります。

人口減少や高齢化が進む中山間地域で、これからも地域住民が安心して暮らし続けることができるようにするためには、日常生活圏域や集落単位での生活サービスの維持、確保をすることが必要です。

伊吹北部地域は、市内で最も人口減少が進行している地域の一つですが、そのような状況だからこそ、どこよりも危機感を感じておられ、どうすれば持続可能な地域として生き残っていけるのかを真剣に考え、議論を始めていただいております。

行政としてもその思いに応えるため、真剣に地域に向き合って議論し、解決策を一緒に導き出さなければなりません。その解決策の一つとして、吉槻地先にある診療所と行政サービスセンターを休校中の東草野小中学校に移設いたします。また、地域連携組織などの設立に向けた議論を進め、持続可能な地域づくりへの一歩を踏み出します。

次に行財政改革の推進についてです。

社会情勢のめまぐるしい変化と厳しい財政状況に対応するためには、あらためて公共のあり方を見つめ直し、効果的・効率的な行政経営と地域経営を実行することが必要です。

今年度策定いたします第4次行財政改革大綱では、市民、地域とともに創る「住みよさ実感 米原市」を目指し、社会情勢の変化に対応できる効果的・効率的な行政経営と地域経営の実行に取り組むことを定めています。

この大綱に定めた目標を達成するため、「行政経営システムの構築」、「職員の意識改革と働き方改革」、「多様な主体による協働のまちづくり」の3つを基本方針に掲げ、最少の経費で最大の効果を上げる、組織および運営の合理化という使命を果たしてまいります。

その一つとして、今年度試行的に実施した大学教授等の外部有識者による意見交換会を本格的に実施し、業務改善に向けて外部の視点による見直しを行い、さらなる活力の創出につながる市民や地域等の活動に対しては積極的に支援ができるよう、業務の改善や支援体制の再構築につなげてまいります。

また、現行の公共施設再編計画の検証とともに、現在の公共施設の状況と今後予定されている公共施設の整備等について中長期的な視点に立ちながら、公共施設再編計画と公共施設等総合管理計画を見直し、施設の有効活用と最適化に取り組んでまいります。

続きまして、米原創生総合戦略の推進についてです。

国のまち・ひと・しごと創生総合戦略等を踏まえながら、本市の現状分析を行い、人口減少に立ち向かうために、これまで、第1期総合戦略に基づき、人口ビジョンの達成に向けて、まち・ひと・しごと創生に関する施策に取り組んでまいりました。

令和2年度からの第2期総合戦略では、基本的な方向性は継承しながら、多様な主体とつながり、未来技術など新たな時代の流れを力にする視点も加え、人口減少社会に果敢に挑んでまいります。

そして、米原駅の利便性と立地特性の強みを生かした滋賀県の広域交流拠点としての新たな機能を発揮し、地域への人の流れと地域が稼ぐ仕組みをつくり、子育てしやすいまち、自分らしいライフスタイルが実現できるまちとして選ばれ、持続可能なまちとなるよう、市民の皆さん、地域やさまざまな団体、事業者など、本市に関わる人たちとともに取組を進めてまいります。

【信頼回復に向けて】

以上、令和2年度における市政運営の基本的な考え方と主な取組事項について申し上げました。

昨年、私はこの場において、職員の不祥事が相次いだことを受け、職員の服務規律の確保や法令順守を徹底していくことを申し上げたところです。しかし、残念ながら、再び職員の不祥事が発生し、市民の皆さまからの市役所に対する信頼を大きく失墜させることになりましたことを深くお詫び申し上げます。

今後は、早急に市民の方々の信頼を取り戻せるよう、職員一同、全力で法令順守、綱紀粛正に取り組んでまいります。

【結びに】

市税等の一般財源の増加が見込めない中、社会保障経費、公共施設等の老朽化対策経費の増加が見込まれるほか、普通交付税の合併算定期間が令和2年度で終了することから、本市の財政運営は一層厳しくなることが予想されます。さらに、人口が減少し、社会的にも経済的にも不安は尽きず、課題は山積しています。

今、地域の自治や家族が持つ役割や責任が果たせなくなっていると言われていますが、高齢期70歳を迎えても支えられる側ではなく、支える側として、社会的役割や責任を持って、元気に活躍いただくことが大いに期待されている時代でもあります。

そして、私たち行政は、性別や年齢に関係なく、多様な生き方や考え方があることを前提としながら、地域を支える力とならなければなりません。

先が見通せない、予測できない不安定な時代だからこそ、私たちには、時代を先読みし、市民の皆さんにワクワク感、期待感を持っていただけるようなまちづくりが求められていると思っています。

過去を振り返るだけでは何も生まれません。良いものは残しつつも、市民の皆さんとともに新たなイノベーション、改革、変革を起こすことが米原の新時代につながっていくものだと確信しています。

「ともにつながり ともにつくる 住みよさ実感 米原市」、令和2年度は統合庁舎の完成を目前に、米原市という一体感を持った一つのまちとして生まれ変わるチャンス、試練だと思っております。

米原新時代のスタートに当たり、市議会議員の皆さまをはじめ、市民の皆さまに格段の御理解、御協力をお願い申し上げ、令和2年度の施政方針とさせていただきます。

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