平成27年度米原市平和祈念式典式辞

更新日:2017年11月30日

 70年前の、8月6日、人類史上初めての核兵器、原子爆弾が広島に投下され、灼熱(しゃくねつ)の閃光(せんこう)と爆風は、十数万人におよぶ、尊い命を奪い、7万戸の建物を壊し、広島の街は、一瞬にして廃墟と化しました。

 その3日後の8月9日、長崎の空は、真っ黒な原子雲で覆われ、凄まじい熱線と爆風と放射線は、7万4千人もの尊い命を奪い、7万5千人の負傷者を出し、かろうじて生き残った人々の心と体に、70年たった今も癒(い)えることのない深い傷を残しました。

 そして、4年前、2011年3月11日の東日本大震災により、福島第一原子力発電所で炉心溶融(ろしんようゆう)、放射性物質の放出という深刻な原子力災害を発生させ、日本の原子力発電の安全神話は、完全に崩壊しました。

 事故発生以降、福島県民の15万4千人が避難、未だ故郷に帰れない原発避難者は11万人。故郷へ帰ることを諦(あきら)めざるを得ない避難者、逆に放射能への恐れから帰れといわれても帰りたくない避難者、それぞれが、厳しい選択を迫られて、終息の目途はたっていません。

 私たち日本人が経験した、広島、長崎、そして福島での被爆、放射能汚染は、原子力、核エネルギーへの意識や認識を大きく変えました。戦争は、最大の人権侵害であり、繰り返してはならない。核は、人類と共存できないということです。

 そして、70年目の8月15日がめぐって来ます。

 本日ここに、戦没者の御遺族をはじめ市民の皆さまならびに御臨席賜りました御来賓の方々をお迎えし、平成27年度米原市平和祈念式典を挙行するに当たり、全ての戦争犠牲者に、謹んで哀悼(あいとう)の誠を捧げます。

 先の大戦では、遠い異国の地での熾烈(しれつ)な戦いの中で祖国を思い、家族の幸せを念じつつも戦場に倒れ、海に没し、また、飢えや病(やまい)に苦しみながら帰らぬ人となった方々、さらに、激しい空襲によりかけがえのない命が無残に失われました。

 その、最愛の肉親を亡くされ、今日に至るまで、決して癒(いや)されることのない深い悲しみに耐え、長い苦難の道を歩んでこられました御遺族の方々の御苦労に対し心から敬意を表します。

 戦後70年の節目を迎えた今年、戦後生まれ、戦後育ちの戦争を知らない世代が多数を占め、私たちの記憶からも、先の大戦の悲惨さが消えつつあります。

 あらためて、戦後70年、復興の道を歩み、今日の平和と繁栄は、戦場に散華(さんげ)された、尊い犠牲の上に築かれたものであることを決して忘れてはいけません。

 一方、世界を見渡しますと、武力紛争や無差別テロ、人権抑圧などの行為が未だ絶えることなく、核兵器の脅威も依然として存在しています。

 また、近年では、日本人も犠牲になるテロと殺戮(さつりく)が世界各地で頻発する、極めて深刻で憂慮すべき事態が続いています。

 米原市は、合併後の平成17年6月に、「非核・平和都市宣言」を行い、核兵器の廃絶と世界の恒久平和を訴えてきました。

 しかし、国際社会でのテロや武力紛争、近隣諸国との緊張関係が増していることを理由に、政府は、昨年7月に集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を行い、さらに、今国会においては、圧倒的多数の憲法学者が憲法違反と指摘している安全保障法案を国民の理解が進んでいないとしながらも、強行採決しました。

 この行為は、憲法に基づく政治、立憲政治を否定し、憲法を有名無実化するものであり到底許されるものではありません。

 世論調査でも明らかなように、今国会での法案成立に「反対」が6割を占め、国民への説明が「不十分だ」は、8割を占めています。

 特に若い人たちは、「民主主義の危機である。多数者は、常に正義なのか、強い者による結果の独占でいいのか」と、国家による武力の行使、戦争への準備を他人事ではなく、当事者として、自らの言葉で、不安と反対の声を上げています。

 今、必要なのは、戦争ができる国になることではなく、憲法9条の戦争をしないという立場に立って近隣諸国との信頼を築く、平和外交を進めることです。

 今年、市民の皆さんから平和へのメッセージや戦時中の体験談など、多くの思いを寄せていただきました。

 その中には、70年前、「生まれて間もなく空襲に遭い、倒壊した家の下敷きになっているところを母と共に助け出された惨劇の様子」「自宅の庭に畳一枚分程の防空壕を作り、家族単位の避難訓練をされた幼少期の記憶」「機関区で頭上から機銃掃射を受け、草の中に身を伏せた恐怖の体験」「学徒動員の工場で焼夷弾(しょういだん)を受け、死を覚悟した瞬間」「食糧が無く、空腹だった戦時中、イモご飯で空腹をしのいだ苦痛の日々の思い出」など、悲惨な戦争を経験したからこそ、子や孫が戦争の無い平和な社会で、安心して暮していけることを願う多くの熱いメッセージ、そして、「二度と戦争をしないという強い願い。」を届けていただきました。

 私たち米原市民は、戦争の惨禍(さんか)を後世への教訓として語り継ぎ、風化させることがあってはならないと、決意を新たにするとともに、今、市民一人ひとりが平和のために行動を起こすこと、平和の道を歩み続けることを、不戦の誓いが揺らいでいるこの時期だからこそ、戦争犠牲者、御遺族の御意志である平和の尊さ、戦争の悲惨さを次代に引き継ぎ、戦争の歴史を繰り返さないことを御霊(みたま)の前にお誓いいたします。

 非核、平和、不戦の誓いとともに希望に満ちた平和な米原市、希望都市まいばらを築くことをあらためて決意し、本日御参列いただきました戦没者御遺族、皆さま方のますますの御健勝と御多幸をお祈りいたします。

 結びに、式典の企画検討をいただきました委員の皆さまに心から感謝を申し上げ、式辞とさせていただきます。

 平成27年8月8日
 米原市長 平尾道雄

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