平成28年8月市長訓示(要旨)

更新日:2018年01月23日

8月1日(月曜日)

 皆さん、おはようございます。先月のことを振り返ってみたいと思いますが、7月2日にびわ湖・長浜米原就活暮らしナビin東京ということで、市内の企業の皆さんと一緒に、首都圏の大学に通われている方や企業にお勤めの方に米原での暮らし方や働き方についてPRする機会がありました。今の若者が、東京での暮らしに必ずしも満足しているわけではなく、何かチャンスがあれば、インセンティブが働くのであれば、東京での暮らしに拘っていないと感じました。

 7月5日に、お隣の関ケ原町と米原・関ケ原広域連携会議を開催しました。柏原地域は米原市の東端に位置していますが、日本列島を東と西で考えれば、柏原地域は東の入口、西への玄関口であると言え、食べ物や生活習慣をはじめ東西文化の境目があります。以前、柏原の皆さんと話した時に、これを売りにできないでしょうかと話をしたことがありました。そして今、地域の皆さんのさまざまな取組によって、東西文化の新たな交流が生まれています。私たちは日本列島の真ん中に位置し、関ケ原という世界遺産にも値するような古戦場がある地域に接しています。互いに手を取り合うことで新しいことを始めていきたいと申し上げました。地方自治体が県域を越えて連携していくことに米原市が先鞭をつけていきたいと思います。

 以前から、米原の水を表に出して、ビジネスにできないかと議論してきたわけですが、7月8日に、このMAIBARA水企画のプレゼンテーションを青山学院大学の学生たちから受けました。確かに学生たちの感性やセンスは私たちと随分違うなと驚きました。しかし同時にまた、今の学生たちの何となく突出しない思考も垣間見え、少し心配になりました。このことは私だけが感じたのではなく、事前審査をされた青山学院大学陸上部の原監督も指摘されていたそうです。今回、ほとんどのグループがペットボトルの価格設定を150円前後にしていましたが、500円や800円といった高価格をつけながら、水の価値を表に出すプレゼンがあってもいいのではないかと原監督はおっしゃっていたそうです。大学ではこのように多様な意見交換ができます。これからの未来を担う若い人たちとの連携を大事にしていきたいと思いますし、それぞれの職場でもそのようなチャンスがあれば、果敢に向き合ってほしいと思います。

 観光客誘致に向けた台湾でのトップセールスは、私にとりましても貴重な経験となりました。台湾の人たちは親日的であると言われていますが、日本人に関する話をいくつも聞くことができました。

 日本統治時代の台湾で大きなダムを造った八田與一さんは、真っ先に名前が挙がる日本人だそうです。ダムは農業水利に大きく貢献し、台湾南部に田園地帯が生まれたと聞きました。

 また、森川清治郎さんという警察官の話も聞きました。この方は、台湾へ赴任されて、貧しい台湾の集落で治安維持活動だけでなく、地域の子どもたちを集めて寺子屋式の勉強の場を開いたり、貧しい人たちに寄り添いながらさまざまな活動をされたそうです。ある時、厳しい税金の問題を見かねて、この集落の生活レベルで納税は無理だと官庁に嘆願書を出す行為にでました。当然、警察官としてはあるまじき行為であり、厳しい対応を迫られることとなってしまい、結果として森川さんは自決されます。しかし、自らの命を賭してまで自分たちの思いを支えてくれたということで、現地の人には森川さんに対する尊敬の念がすごくあったようです。森川さんは環境衛生の教育にも熱心だったのですが、森川さんの死後20年くらい経って台湾でその地域にコレラなどの伝染病が流行った時に、森川さんの影響で衛生に熱心に取り組んでいた集落は伝染病の流行をまぬがれたそうで、自分たちの命を救ってくれたのは森川さんだと、この方を今でも神として崇めているそうです。

 形としては占領、植民地ということが背景にはありましたが、インフラ整備など私たちの先人による台湾への貢献のおかげで日本人に対する尊敬が残る中、台湾の人たちに日本に来てくださいと言う時に、どういう思いやりや日本人の精神風土を含めてアピールできるのか。もう一度、しっかりと内容を精査する必要があるのではないかという感想を持ちました。

 もう一点。台湾駐在の旅行代理店の方がおっしゃっていた話で大変印象的だったものを紹介します。その方が台湾に赴任してきて早々、市内のバスに乗った時の話です。慌てて乗ったものですから、財布を忘れ、大きな紙幣しか持っていなかったそうです。バスの運転手に大きな紙幣しか持ち合わせていないと伝えたところ、運転手が乗客に呼びかけ、乗客が次々と小銭を持って来て入れてくれたそうです。台湾の方の人を思いやる態度に本当に感激したということでした。今でも台湾の方たちには、道で迷っている旅行者や外国人がいると、目的地を聞いて連れていくスタイルが残っているそうで、これも日本人が残した道徳や倫理観だと聞いたと旅行代理店の方はおっしゃっていました。

 私たちは今、外国人が道に迷っている時にそばへ寄って道案内ができるでしょうか。バスの中で小銭がないと困っている人にカンパできるでしょうか。現地の人たちの声を聞かせていただき、私たちはある意味、後退した日本人になっているのではないか、こんなことを思いました。

 7月21日、22日と滋賀県市長会市長研修で富山県と石川県へ行ってきました。金沢では、社会福祉法人が経営をされているShare金沢という施設を視察しました。施設の方は「ごちゃまぜ」という言葉を使われていましたが、知的障がい者や高齢者、母子家庭の親子などさまざまな人たちが集まって施設運営をされています。

 施設ではアルパカを飼われているのですが、知的障がいがある子どもがそのアルパカを連れて街へ出るそうです。障がいを持っている子どもが買い物に行ったりすると、何となく疎遠で、声を掛けにくい雰囲気になってしまいがちですが、アルパカを連れて行くことで、周りの親子や大人が寄って来て、障がいのある子どもとのコミュニケーションを取り始めるそうです。街の人たちにさまざまな影響を与えているし、街へ出た子どももさまざまな影響を受けてくる。交わることの大切さを感じるお話でした。

 また、施設内には車が通る道もありますが、それ以外はいわゆる3尺里道と言われる90センチ程度の道しかありません。狭い道で出会った時、お互いを思いやり体を寄せ、目を見てあいさつをする、これが地域で暮らす原型だと。だから施設内の道路は狭くしてあるそうです。素晴らしいなと思いました。地方自治体職員として、地域をつくる、建物を建てる、そして全体を演出する際に、どんな哲学や思想を入れ込むか、このShare金沢の取組から学ぶべき点がたくさんあると思いました。

 今月は、いよいよリオ・オリンピックが開幕します。米原市出身の西村綾加選手、清水美並選手が代表選手として選ばれているホッケー女子日本代表の初戦が行われる7日は、パブリックビューイングで応援したいと思います。お二人の活躍を期待しますとともに、ニュージーランドとのホストタウンのキックオフイベントもありますので、オリンピックを契機として新しいことにチャレンジしていこうとする機運の醸成につなげていきましょう。

 6日には、米原市平和祈念式典が行われます。国際社会に非戦国家としての日本を堂々と示しているのが日本国憲法9条だと私は思います。しかし、それが揺らいできているのではないかと危惧しています。広島、長崎、あるいは第五福竜丸を含めて、日本人が原爆に遭ったからこそ果たすべき役割、福島での原発事故を経験したからこその責任があると私は確信しています。原爆の悲惨さを伝えて、この悲劇を繰り返さないこと、核と人類は共存できないことを世界にしっかりと示していくことが21世紀に暮らす日本人の責任だと考えています。この平和祈念式典、6日の広島、9日の長崎、そして15日の終戦記念日を平和と未来についてみんなで考える機会にしてほしいと思います。

 連日猛暑が続いていますが、市民の皆さんにサービスが提供できるのも職員の皆さんの健康があってのことです。健康管理に万全を期してください。厳しい夏を乗り切るんだという思いに立って、皆さんが今月も大きな汗をかかれることを期待しています。

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