東草野の水利用

更新日:2017年11月30日

四集落の特徴的な水利用

東草野の集落景観を特徴づける要素として集落内を流れる水路とそれに伴うさまざまな水利用施設の存在があります。それらは融雪や、麻作りなどの生産、バイのあく抜きなどの食生活といった、この地の伝統的な生活文化と密接に結びついていて、東草野の文化的景観を語るときに欠かすことのできない構成要素です。さらに、四集落で水利用のあり方は一様ではなく、それぞれに特色ある姿を示しているのも魅力です。

甲津原のカワトの写真

甲津原の集落内には豊富な水が勢いよく流れています。この水路はカワと呼ばれることが多く、それをせき止めて利用する施設をカワトと呼んでいます。カワトは水路に横棒を渡しそれに板をかけて水をせき止めるといった非常に単純な形態のものが多数をしめています。かつては洗濯、食器や野菜などの洗い物に利用されました。井戸ができるまではカワトで水をくみ、飲料水や風呂水にも利用されていました。

甲津原ではかつて麻栽培が行われていましたが、麻を水につけたり、さらしたりするのもカワトでした。また、おしめなどの汚物はカワトでは洗わず、集落末端の水路が姉川に流入するおしめ洗い場があり、そこで洗ったそうです。水路やカワトは今でも野菜や農具の洗浄、冬期の融雪などに利用されています。

曲谷のイケの写真

曲谷では集落内の水路をサワと呼びます。かつての水路は、一部を広くして、側面に石を並べて補強したものを洗い場として利用していました。これもサワと呼びます。山水を引いたものや湧き水の利用がみられるのが曲谷の特色です。ことに白山神社一帯は湧水が多く、近くのイケは水路からの水量よりも湧水によって多くの水を得ています。上水道がひかれるまでは主にサワの水を飲料水として利用していました。

甲賀の集落は姉川の両岸に分かれています。右岸では、白山神社の下にあるコンクリート製のマスから常に水が噴き出していますが、ここはかつて大きなイケがあった場所で防火用水のほか、麻をつけることにも利用されていました。左岸では、姉川から引いた水路が現在でも利用されています。この水路を集落に分岐する場所の高低差を利用して近年では水車が設けられ、景観上のアクセントとなっています。

吉槻のイケの写真

吉槻は、集落内水路や水利用施設の伝統的な姿をもっともよく留めています。その大きな特色は、ほぼ各家にイケが設けられていることで、甲津原のような水路をせき止めるカワトのようなものはほとんどみられません。イケは水路に接したものと、水路から少し離れた屋敷地内に設けたものに分けられ、後者には石組みで周囲を護岸したものや上屋があるものがみられます。こちらには水路から水を引くほか、ショウズと呼ばれる湧き水を利用するものがあります。イケの水は洗い水のほか飲料水としても利用されていました。また、かつては組ごとに用心イケと呼ばれる大きなイケがあり、防火水槽や麻を水につける場所として使われていました。

上水道の整備以前は、飲料水のほかさまざまな洗い水、風呂水、融雪、麻生産、バイの皮落とし、防火用水など複合的に使われていましたが、今では、飲み水や風呂水など直接身体に接触する利用はなくなり、集落内水路のさまざまな機能が時代の変化の中で低下していますが、人と自然の関係を学ぶことができる東草野の残しておきたい重要な景観です。

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