山頂・3合目における植生保全について
中央登山道入口付近に植生防護柵を設置しました
令和6年5月31日、山頂中央登山道入り口付近で、自然保護団体、一般ボランティア、連携企業、関ケ原町職員、米原市職員ら36人が参加し、ニホンジカの食害から植物を守るための金属柵を設置しました。
この区域(エリア)は、山頂域の中でも特徴的な植物が生える場所で、局所的に金属製の柵で囲い、植生を復元することを目的としています。イブキトリカブトやシナノキ、ヤマトグサなど、今後の植生復元が期待されます。
ボランティアにより柵を設置いただきました。
連携企業や滋賀・岐阜の自治体職員も一緒に取り組みました。

悪天候のため後日仕上げ作業を行い、柵が完成しました。
ドローンによる植生防護柵運搬

2024年5月10日に植生防護柵の資材を運搬用ドローンを用いて、日本自動車道株式会社(伊吹山ドライブウェイ)の協力をいただき、伊吹山ドライブウェイ駐車場から山頂部へ運搬を行いました。
使用した運搬用ドローンは、滋賀特機株式会社からいただいた寄付金を財源として導入したもので、25キログラムまでの資材を運搬することができます。
運搬用ドローン(マゼックス製 森飛25)
植生防護柵資材
・金属フェンス(16キログラム/枚) 25枚(400キログラム)
・単管パイプ3メートル(7キログラム/本) 8本(56キログラム)
午前5時から伊吹山ドライブウェイがオープンする午前8時までの約3時間(29フライト)で、伊吹山ドライブウェイ駐車場から山頂等への運搬を完了しました。
金属フェンス1枚を人力で山頂へ運搬すると2人で約40分を要します。
運搬用ドローンを活用することで、過酷な条件下における資材運搬の省力化が図れました。

駐車場から山頂へ運搬

山頂資材仮置き場

駐車場から西登山道へ運搬

西登山道植生防護柵設置場所
植生防護柵で植物と動物を守る
伊吹山では、伊吹山固有種(ルリトラノオ、コイブキアザミ、イブキレイジンソウなど)、寒冷な時代の生き残りである北方系の植物(グンナイフウロ、キンバイソウ、イワシモツケなど)、日本海側多雪地帯の植物(スミレサイシン、イブキトリカブトなど)、石灰岩地を好んで生育する植物(イチョウシダ、イブキシモツケなど)等の約600種の植物が生息しています。これまで、戦後の行動様式の変化により採草行為の消失に伴い、全面的な森林遷移を抑制するための植生調査と低木林・高茎植物伐採を行ってきました。
2000年代以降はニホンジカの急増に伴う鹿の食害・踏圧害が大きな問題となっています。根本対策としては、ニホンジカの捕獲により個体数管理を進めることが必要ですが、捕獲による効果が発揮されるまでは相当の時間を要します。このため、貴重な自然草原が残る伊吹山頂一帯と3合目については、植生防護柵(防鹿柵)で植物とそこに生きる動物たちを守っていきます。
これまで設置していた化繊ネット柵は、ニホンジカの執拗なアタックや世界記録を持つ伊吹山の積雪により破損が相次いでいるため、強固な耐雪性金属柵に順次変更していくほか、確実に守るためのスポット柵や小中規模の柵の設置を進めます。
【手法】金属柵1.5キロメートル、化繊ネット柵3キロメートル、スポット柵・小中規模柵8基 ほか
植生防護柵の設置の効果
シモツケソウ再生地(見頃:7月下旬~8月上旬。西登山道の登り坂を約700メートル上った地点。)の様子です。地元自治会と保護団体の尽力により、シモツケソウがよみがえりました。
2016年度に完成した化繊ネット柵の内側(左側)と外側(右側)。化繊ネットは、年々鹿のアタック等で破損しています。

2023年6月に施工した山頂金属柵。今後、この柵の延長を伸ばしていき、また個別に囲む中小規模の柵を増やします。
山頂一帯の植生防護柵の設置計画図
山頂一帯の植物群落の概況
- ニホンジカが好まない(不嗜好)植物群落の分布が拡大している。
- ニホンジカの採食圧や、ニホンジカやイノシシによる踏圧等により、植物群落の高さ(植物の背の高さ)が低下している。
- 群落構成種が変化し、嗜好植物の減少と不嗜好植物の増加が見られる。
さらに獣害の段階が進むと、現在はニホンジカが好まない植物にも被害が広がり、裸地化や土壌の流出が進行する可能性があります。
伊吹山で鹿が好む植物 | 中間の植物 | 伊吹山で鹿が好まない植物 |
---|---|---|
ニッコウキスゲ、オオバギボウシ、ホソバノアマナ、マユミなど(特に好む) シシウド、イブキトラノオ、コイブキアザミ、ミヤマコアザミ、コオニユリなど |
イブキトリカブト、キンバイソウ、サラシナショウマ、メタカラコウ、チシマザサなど |
クサタチバナ、オオヒナノウスツボ、キオン、レモンエゴマ、ハナヒリノキ、フッキソウなど |
3合目の植生防護柵

3合目のユウスゲ群落【見頃:7月】
柵に守られ、夕方に花を咲かせます

地元・上野区の「ユウスゲと貴重植物を守り育てる会」が長年の尽力で保全が実現しています
標高約750メートル地点の三合目では、山頂とはまた異なる植物群落が広がっています。
特にユウスゲ群落は有名ですが、そのほかササユリなど山頂では見られない植物が、地元の保全団体の活動により保たれています。
3合目の保全活動については、以下の保全団体のウェブサイトで詳しく紹介されています。
ユウスゲと貴重植物を守り育てる会の活動(NPO法人霊峰伊吹山の会内で紹介されています)
- この記事に関するお問合せ先
-
山東支所 まち整備部 まち保全課(伊吹山植生復元プロジェクト推進室)
電話番号:0749-53-5175
ファックス:0749-53-5179
メールフォームによるお問合せ
更新日:2024年06月24日